第70話 召喚魔法の使い方
「セシル。アーニャさんの家族が見つかったって書いてあったけど、本当なの?」
「うん。まぁ正しく言うと、見つかったというより、お兄さんが魔法で呼び出したんだけどね」
「魔法で呼び出した? どういう事なの?」
ミアさんや、お連れのレオンさんやダニエルさんも顔を見合わせているので、一先ず俺が魔法を使えるようになった経緯を説明してみた。
「へぇー。二次魔法ね……って、何なの召喚魔法って!? 教会って、そんな魔法が使えるの!?」
「そうみたいですね。ミア様、事実として、ここに最前線で魔王と戦っていたパーティのメンバーと、その家族が居るので」
「ほっほっほ。これは、後で教会からしっかり話を聞きたいのぉ。魔法の仕組みもそうじゃが、魔法行使の倫理感なども含めてのぉ」
何だろう。ウィザードのダニエルさんは、ちょっと怒っている気もする。
やはり伝説級の魔法使いと呼ばれるくらいだから、魔法の使い方にも言いたい事があるのだろう。
事実として、俺なんて拒否権もなく、強制的に異世界へ呼ばれた訳だし。
しかも最高のクレリックを呼ぼうとして斉藤クリニックを呼んでしまい、それに巻き込まれた……って、待てよ。
アーニャの家族や、ミハイルさんの仲間や家族も、名前さえ分かれば誰でも呼べてしまった。
「あの、ミハイルさんたちの中で、誰か魔王の名前を知っている人って居ませんか?」
「ん? 魔王の名前なら、俺たちじゃ無くても誰でも知ってるぜ。魔王アブラアム=レガツォーニ……魔法を使って、全世界に宣戦布告してきたからな」
「なるほど。ミアさん、今からありったけの戦力を集められませんか?」
俺の意図が理解出来ず、キョトンとしながら首を傾げるミアさんに、二次魔法による召喚魔法の特性――名前さえ分かれば、強制的に呼べてしまう事と、俺が思い付いたアイディアを話してみる。
「つまり、予め最高戦力を招集しておいて、そこへ魔王を召喚。皆で総攻撃するって事?」
「はい。街からはもう少し離れた方が良いかもしれませんし、もしかしたら魔王は召喚魔法をブロック出来るという事もあるかもしれませんが」
「いえ、とても良い案だと思うわ。予め戦力を集めて準備出来ておける所が最高で、これなら国の騎士隊を遠くの魔王城まで派遣したりする必要もないし、最悪ブロックされたとしても謝って済むレベルですもの。ブロックされても、何か被害をこうむる訳じゃないし、やってみましょう!」
一先ずミアさんから、今日の昼過ぎに、ここから真っ直ぐ南東へ所にある平原で集合だと言われ、アーニャの家族を元の国へ戻す件についても、国レベルでサポートしてくれるという話になった。
「セシル、アーニャ。午後から魔王と戦う事になっちゃったから、皆は城魔法の家の中で待ってて」
「お兄さん! ボクも戦うよー! 魔法なら得意だし、遠くからでも攻撃出来るからね」
「そっか。でも、決して無理しないでね」
「もちろん! お兄さんの傍に居るよ」
そう言って、セシルが抱きついてくる。
……あれ? まぁいいか。俺だって前線に行くつもりは無いしね。
「わ、私は……その、後方支援くらいします……」
「うん、ありがとう。じゃあ今から時間ギリギリまでポーションを作るから、アーニャは怪我をした人とかが居たら、そのポーションを渡してあげて欲しいんだ。もちろん、後方でね」
「り、了解」
それから、皆で南東へ移動すると共に、一旦帰ったミアさんたち三人を除いて、全員で薬草摘みを始める。
今だかつてない程の大量の薬草を受け取り、俺はひたすらポーションを調合し、セシルはリビングで寛ぎながらラノベを読み、アーニャはナターリヤやフェオドラさんと一緒に皆のご飯作り。
ミハイルさんたちは自分の装備の点検を始め、そして皆で揃って少し軽めの昼食をとる。
それから暫くすると、遠くから地鳴りのような大きな音が聞こえてきた。
おそらく、想像通りの物だろうと思いながら外へ出てみると、
「お待たせー! この国と周辺国も巻き込んで、一万の騎士と宮廷魔術師を連れて来たわよー!」
ミアさんが数え切れない程の人を連れてやってきた。
それから、陣形と戦術の確認、そして準備。
召喚予定の場所を騎士やミハイルさんたちが取り囲み、その周囲を弓兵。さらにその周りを大勢の魔術師やセシルが取り囲む。
手筈としては、先ず俺が召喚魔法を使い、魔王を直接見た事があるというミハイルさんたちが、本物の魔王かどうかを確認する。
……俺の時みたく、万が一間違いだったら洒落にならないからね。
で、魔王だった場合は、先ずはそれまでに魔力を練っておいた魔術師たちが、一斉に魔法を放ち、次いで弓兵たちが弓矢を。そして、状況見合いで前衛の騎士たちが突撃するという手筈だ。
これに加え、準備として、
「Aランクポーションを配るだとっ!? き、貴重な高ランクポーションをっ!」
前衛には生命力や防御力がアップするポーションを飲んでもらい、後衛には魔力がアップするポーションを飲んでもらう。
当然、俺もAランクのマジック・ポーションを飲み、
「じゃあ、行きますよ……サモン・コール。魔王アブラアム=レガツォーニ!」
召喚魔法を使用する。
すると、俺の倍くらいの背丈がある仰々しい化け物が現れ、
「間違いない! 魔王だ! 魔王アブラアムだっ!」
「魔法部隊! 一斉攻撃っ!」
指揮をとるミアさんの声が響き渡った。
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