第65話 トレース

 熱いスカウト攻撃をセシルが妨げ、一先ずミアさんたちとの話が終了した。

 とりあえず、これからどうするという結論が出ないまま、一旦城魔法を使って家で休むため、街の外へ。

 約一日ぶりとなる実家を出し、アーニャが昼食の準備をしている横で、今後の――アーニャの家族探しについて再検討を行う。


「セシル。商業ギルドがダメなら、冒険者ギルドはどうかな?」

「それも一つの手だけどー、冒険者ギルドの本部はこの街には無かったはずだよ」

「なるほど。冒険者ギルドの支部で話を聞くより、本部の方が良いけど……せっかくミアさんが城に聞いてくれている訳だし、動くにしても、その回答を聞いてからの方が良さそうだな」

「そうだねー。ミアは三日もあれば、連絡が来るはずだって言っていたしねー」

「じゃあ、とりあえず三日間は、この街の近くに滞在しておくべきか」


 俺とセシルとで方針を話し合い、昼食を食べながらアーニャにも意見を聞いて、一先ずこの街に滞在する事となった。

 何と言っても、宿代がタダだし、ついでに周辺で薬草を採って薬を作って売れば資金も得られる。

 ただ、何もせずに三日間過ごすという訳でもないし、別に構わないだろう。

 今後の方針が決まり、昼食を食べ終えたので、少し席を外す事にする。


「ごちそうさま。アーニャ、ありがとう」

「いえ、どういたしまして。ところで、リュージさん。どちらへ行かれるのですか?」

「いや、昨日から調子が悪いから、一階で自分自身を診察してみようと思ってさ」


 そう言って、階段を下りて診察室へ移動すると、


「診察!」


 早速自分自身に診察スキルを使用してみた。


『診察Lv2

 状態:健康

    二次魔法 トレース状態』


 すると、いつもの銀色の枠に二次魔法トレース状態という見慣れない言葉が書かれている。

 二次魔法でトレース状態とは、どういう意味だろうか。

 トレースと言えば、確か何かをなぞるとか、写すって意味だった気がする。

 ……ん、待てよ? トレースで、二次魔法って、もしかして!

 未だにスキルの効果が分かって居なかった二次魔法について、思い当たる事があり、慌てて外へ出る。

 それから、何も無いただの草原に向かい、


「トレース!」


 二次魔法を使用してみた。


――ゴゥッ


 すると、突風が発生し、目の前に広がる草を激しく揺らしていく。

 予想通りだ!

 それと、ずっと微妙な感じで身体に残って居たモヤモヤがスッキリと消えている。

 これはもしや、


「トレース!」


 とある可能性に気付き、もう一度二次魔法を使うと、今度は何も起こらなかった。


「なるほど。二次魔法ってそういう事か! ……セシル、セシルーっ!」


 仕組みを理解したが、その裏付けを得るため、急いで家の中に入り、リビングでラノベを読もうとしていたセシルを連れてきた。


「セシル。悪いんだけど、何でも良いから、その辺に適当な攻撃魔法を放ってくれないか?」

「え? 別に構わないけど……」


 不思議そうにしながらも、セシルが草原に向かって竜巻を起こす。

 その竜巻を見ると、先程まで治まっていたモヤモヤが再び鎌首を持ち上げる。

 だが、これで良い。俺の考えが正しければ、


「トレース!」


 二次魔法を使用すると、先程セシルが起こしたよりも、少し小さい竜巻が発生し、モヤモヤが綺麗に消えた。


「お兄さん? 今のって……魔法だよね?」

「あぁ。どうやら二次魔法は、見た魔法の劣化版を一度だけ使えるみたいだ」


 二次とトレース……正直、ネーミングはどうかと思うけど、スキルの効果は非常に素晴らしい。

 俺は魔法が使えるようになったみたいで、嬉しさのあまり、セシルに魔法を連発してもらい、俺も二次魔法を使いまくる。


「トレース!」

「トレース!」

「トレース!」


 ……まぁだからと言って、セシルがマジック・ポーションを飲まなければならない程に魔法を使ってもらったのは、やり過ぎだったかもしれない。

 しかし、そのセシルのおかげで、トレースを連発しまくった結果、


――スキルのレベルが上がりました。二次魔法「トレース」がレベル2になりました――


 早くもスキルのレベルが上がってしまった。

 その結果、


――スキルの修得条件を満たしましたので、二次魔法「アーカイブ」が使用可能になりました――


 新たなスキルを修得してしまった。

 アーカイブ……このスキルはどういう効果があるのだろうか。

 俺がトレースの使用を止めたからか、セシルが近寄って来た。


「お兄さん、どうかしたの? 魔法の使い過ぎで疲れちゃった?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど……いや、いいや。とにかく使ってみよう。……アーカイブ!」


 スキル名から効果を考えていたけど、一先ず使ってみれば分かるかもしれないのでスキル名を叫ぶと、いつも見ている銀色の枠が現れたのだが、その中身が大きく異なっていた。

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