第50話 VSスケルトン
アーニャとセシルは俺が守る!
意気込みだけはあるのだが、冷静に考えてみると、相手は剣を持っているのに俺は丸腰だった。
異世界へ来たというのに、未だに武器の一つも持っていないって、どうなの俺!?
危機意識が薄すぎるっ!
何かないかと考え、倉魔法から買ったばかりのランプを取り出すと、スケルトンに向けて思いっきり投げつける。
すると、コンと乾いた音を立ててスケルトンの頭にぶつかり、ランプが地面に落ちた。
見た目と違って、骨もランプも想像以上に頑丈なんだね。
「思ってたのと違ーう!」
俺としては、ランプが割れて中の油がスケルトンに付着し、火が引火して燃え盛る……みたいなのを想像していたのに、先ずランプが割れないし、スケルトンも「何か当たった?」みたいなリアクションだし。
この世界のガラスは頑丈なの? というか、そもそも燃料が油じゃないの?
ランプを投げずに、手に持って盾として使えば良かったと後悔していると、
「お兄さん、下がって」
そう言って、セシルが突風を起こす。
スケルトンが強烈な風に吹き飛ばされて壁に激突すると、俺のランプ攻撃とは違って、骨がバラバラに崩れ落ちた。
うーん、やっぱり俺も魔法の勉強をしないといけないな。
「大丈夫? お兄さん」
「あぁ、俺は大丈夫だよ。ありがとう。……アーニャ、スケルトンはセシルが倒してくれたよ」
「そ、そっか。良かっ……」
アーニャが話している途中で、突然固まる。
何事かと思ってアーニャの視線の先に目をやると、先程セシルが吹き飛ばしたスケルトンの骨が震えだし、元の骨格標本みたいに戻ってしまった。
そして剣を手にしたスケルトンが、再びこちらへ歩いてくる。
あれ? これって、もしかしてセシルの魔法で倒せない!?
遺跡の地下なので、風でどこかへ吹き飛ばす事も出来ず、倒しても復活してくる。こんなのが大量に出て来たら……
「二人とも、一旦戻ろう! 作戦会議だ!」
「え? でも、お兄さん。一体しか居ないから平気だよ?」
「奥にもっと沢山居るかもしれないだろ? とにかく戻るよっ!」
来た時とは逆で、あまり乗り気では無いセシルを引き寄せ、一方で先陣を切って引き返そうとするアーニャに引っ張られる。
意外な事に、走って追ってきたスケルトンから逃げ、結界の外へ。
「お、お帰り。中はどんな感じだった?」
「中に骨の魔物が居たんだけど」
「あー、なるほど。この結界は、そういうのを外に出さないようにするための物か。俺が中に入れないように、その魔物も外に出られないんだろうな」
「とにかく、一旦出よう。風の魔法で衝撃を与えて身体が崩れたのに、すぐさま復活してきたし」
「まぁいわゆるアンデッド――不死だからな。倒すなら、やっぱり火を使うべきなんだろうな」
ヴィックは簡単に言ってくれるけど、洞窟みたいになっている場所で火を使えって言われてもなぁ。
酸欠とかにならなければ良いのだけれど。
「という訳で、セシル。風の魔法じゃなくて、火の魔法で攻撃って出来る?」
「ううん、無理だよー。ボク、火の精霊は使えないもん」
あー、そういえば、セシルがそんな事を言っていた気もする。
風で吹き飛ばして、崩れ落ちてから復活するまでの間に無視して進んでも良いけど、後々大変な事になりそうだし、やはり倒す手段が欲しい所だ。
再びアーニャを先頭に遺跡の地下から出ると、
「やったー! 帰って来たー!」
アーニャが嬉しそうにピョンピョンと跳ねる。
我慢してついて来ていたけれど、相当怖かったらしい。
少しして、俺やセシルの視線に気付いたのか、
「こ、こほん。では、作戦会議をしましょうか。どこが良いですかね?」
慌てて冷静な振りをする。
ちょっと顔が赤く染まっているのが可愛らしい。
「じゃあ、どこか家を出せそうな場所を探そうか」
気付けば、闘技場の遺跡には観光客っぽい人たちが居るし、この辺りからは離れた方が良さそうだ。
暫く歩いた結果、町の外へ家を出して、先ずは昼食を済ませる事にした。
露店で買った食事を食べた後は、リビングでゴロゴロ――はセシルだけど、ソファで寛ぎながら、意見を出し合う。
「あのさ。火がダメなら、聖なる力的な物で倒せないかな?」
日本のゲームの定番、アンデッドには回復魔法だったり、聖属性の武器や魔法が良く効くという設定を元に言ってみた所、
「聖なる力的な物って?」
「え? そ、その……聖剣? とか、聖なる魔法? とか」
「お兄さん。聖剣は国宝級のアイテムで、どこにあるかも分からないし、聖なる魔法……神聖魔法かな? は、教会の人が使う魔法じゃないかな?」
この世界に存在はするものの、今この場に無いよね? という話で終わってしまった。
ちなみに、セシルは光の精霊魔法を使う事も出来るらしいけど、攻撃向きの魔法は使えないのだとか。
アンデッドを倒す方法って何があるだろうか。
火に関するアイテム――例えば、油や松明なんかを持って行って燃やしてしまうのは有効な気がするけれど、やっぱり酸欠の心配がある。
ゲームだと回復魔法の他には……
「そうだ、回復系のポーションをかけてみたらどうかな?」
これだっ! と閃いたアイディアを話してみた。
だけどイマイチらしく、セシルもアーニャも、そしてヴィックまでもが微妙な反応を見せる。
……試しに、ヴィックへポーションを掛けてみたらどうなるだろうか。
やや本気で実験してみたいと思い、俺は調剤室にあるFランクのバイタル・ポーションをこっそり取りに行く事にした。
流石にAランクやBランクのポーションは強力過ぎる気がするからね。
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