第42話 Aランクポーション

 クリニックへ入ると、すぐさま調剤室へ。

 何か、何かあるはずだ。

 直接攻撃出来るような危険な薬や薬草は無かったけれど、例えば飲んだ人が精霊魔法を使えるようになるとか、物凄く早く動けるようにするとか。

 滋養強壮の薬や、見えない物を見えるようにする薬があったんだから、肉体強化の薬が有っても不思議ではないだろう。


「って、待てよ。暗い場所でも見えるようにする目薬のAランクを使ったら、本来見えないはずの妖精が見えるようになった。じゃあ、滋養強壮の薬のAランクを飲めば、何かしら強化されるんじゃないか?」


 前に作った滋養強壮の薬――ナリッシュメント・ポーションを飲んだ時はBランクで凄い効果があった。

 その時作ったけど、飲まなかったAランクのポーションを探し出し、一気に飲み干す。


「身体が熱い。力が……漲ってくる」


 身体の奥底から湧き出る力を抑えつつ、自分自身に診察を行うと、


『診察Lv2

 状態:健康。身体能力上昇(大:三十分)』


 状態に身体能力上昇と表示されていた。

 三十分というのは効果が持続する時間だと思われるから、この三十分でレッドフロッグを倒すんだっ!


「セシル、お待たせ。大丈夫か!?」


 溢れ出る力を感じながら、再び皆の元へ戻ると、調度セシルが起こした竜巻が消える所だった。


「お兄さん。今のところ、現状は変わりなしだよ。ボクが竜巻を起こして、あの蛙が……今もだけど、また沢山蛙を出すっていう繰り返しだよー」

「そうか。まだ魔法は撃てそう?」

「大丈夫だと思うけど……こんなに連続して魔法を使った事がないから、正確には分からないよー」

「……そうだ! セシル。このマジック・ポーションを飲んで。魔力が回復するから」

「分かった。ありがとー」


 セシルにAランクのマジック・ポーションを渡し、


「ララさん。お願いがあります。その剣を少しだけ貸していただけませんか?」

「え? か、構いませんが、どうされるんですか?」

「俺が、あのレッドフロッグを直接斬ってきます。今なら、セシルの竜巻で水も吸い上げられ、川が浅くなっているので行けると思うんです」

「で、でも、近づいたら毒にやられちゃいますよ!? おそらく、レッドフロッグの毒はポイズンフロッグとは比べ物にならない程強力なはずです」

「それは……うん、大丈夫です。毒は、効きませんから」


 今度はAランクのパナケア・ポーションを取り出し、一気に飲み干す。

 ララさんに飲ませてしまい、二十四時間の状態異常無効化が付与されたあのポーションだ。

 これで蛙の毒は効かない。

 あの巨体だから動きは鈍いだろうし、身体能力が強化されている今なら、戦いの素人の俺だって何とか出来るはずだ!


「で、ですが……」

「大丈夫です。それより、このままではいつまで経っても奴を倒せないし、町も救えません」

「だったら私が……」

「いえ、俺にはちょっとした作戦があるんです。お願いします。任せてください」


 躊躇うララさんの目をじっと見つめていると、


「分かりました。けど、必ず無事に戻ってきてくださいね」


 長い両刃の剣を預けてくれた。

 ララさんに改めて御礼を言うと、セシルに改めて竜巻を依頼する。


「セシル。もう一度竜巻を頼む。それから、俺が合図したらもう一度竜巻を起こしてくれ」

「分かったよ。じゃあ、貰ったマジック・ポーションは次に竜巻を起こした後に飲むね」

「あぁ、そうだな。合図まで少し時間を貰う事になると思うし、それが良いと思う」


 その直後、セシルが竜巻を発生させ、またもや川の水とポイズンフロッグたちが上空へ吸い上げられていく。

 セシルがマジック・ポーションを飲む様子を横目で見つつ、竜巻が消えた瞬間、


「行って来る!」


 殆ど水が無くなった川を、ピチャピチャと音を立てながら、レッドフロッグ目掛けて一直線に走って行く。


「このぉぉぉっ!」


 俺の身長の倍近くあるレッドフロッグの前足に、力いっぱい剣を叩き付けると、その足が千切れ飛んだ。

 行ける! 剣というより鈍器みたいな使い方だけど、身体能力上昇効果のおかげか、ダメージを与えられる!

 改めてポーションの効果に感謝しつつ、第二撃を放とうとした時、レッドフロッグが口を開き、紫色の煙が出てきた。


「うげっ! まさか、毒霧!?」


 状態異常無効となっているため、俺には効かないと分かっているのだけれど、見た目的に凄く嫌だ。

 けど、三十分しか時間が無いし、行くしかない。

 意を決して、もう一つの前足を切り落とし、続いて後ろ足も斬る。

 そこでようやくポイズンフロッグの群れが現れたけど、そろそろ大丈夫だろう。

 近くのポイズンフロッグを蹴飛ばしながら、レッドフロッグから離れると、


「セシル! 竜巻を頼むっ!」


 大声でセシルに合図を送った。

 何度も見たセシルの竜巻の有効範囲は分かっているので、ここまで離れれば大丈夫だと思っていたのだが、


「え? ちょ、嘘だろっ!?」


 どういう訳か、先程までとは違う、かなり大きな竜巻が現れた。

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