47.5  大君のなげき

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji

 10月にも紅葉狩りを口実に薫と匂宮は宇治に行くんだけど、明石の中宮さまが使いをよこして大げさな紅葉の宴にしてしまって、匂宮が抜け出してこっそり中の君のところに行けなくなっちゃうの。匂宮もツライみたいで山荘のあたりの色づいた樹々を見て涙ぐんでるの。


 ~ 秋はてて 寂しさまさる もとを 吹きな過ぐし みねの松風 ~

(秋が終わって寂しくなる木の間を松風もあんま激しく吹くなよ……)

(逢いたくて逢いたくて仕方ないのにそんなに妨害すんなよ……)


 お膳立てした薫も事情を知っている少数の人たちも、匂宮は本当に中の君のことを愛しているんだな、ここまで来ているのに逢えないなんて可哀想にって同情するの。


 山荘では近くまで匂宮が来ているのに結局訪ねてきてくれなかったから「もう飽きられたの?」って中の君も大君も落ち込んだの。


 親がいないからこんな風にカルく見られてしまうんだわって大君はふさぎ込んで心痛のあまり病気になってしまうの。


 一方匂宮も外出禁止令が出てしまい、夕霧の娘の六の君との縁談が本人の意思とは関係なく決まってしまうの。明石の中宮さまに「気になる人がいるならそちらは愛人でいいでしょ」なんて言われてしまって、薫もどうしたもんかと頭を抱えるの。匂宮は何を見ても何をしていても中の君のことを想い出しているみたいよ。


 大君が体調を崩していると聞いて薫は宇治まで出かけるの。御簾ごしなんだけれど、身体が弱っている様子なので、薫は大君を都に引き取ろうと決めるの。匂宮がなかなか通ってこられないことも心変わりではない、彼のせいではないと話すの。

 けれども匂宮の(六の君との)結婚の話が宇治にも伝わってしまうの。中の君は自分は立派な奥さまが決まるまでの繋ぎの役目みたいなものだったんだわ、これからわたしはどうしたらいいのかしらと悩んでしまうの。大君はそのニュースのショックで具合がますます悪くなってしまうの。そんなときに匂宮から中の君に手紙が届くの。


 ~ ながむるは 同じ雲井を いかなれば おぼつかなさを 添ふる時雨しぐれぞ ~

(同じ空を眺めているのに、こんなに逢いたいって想う気持ちが時雨になっているんだ)


 もう長い間匂宮に逢えなくて恋しく想っている中の君はこんな歌を返すの。


 ~ あられ降る 深山みやまの里は 朝夕に ながむる空も かきくらしつつ ~

(あられが降る深里は(あなたが眺めているという)空も曇っているわ)

(時雨どころかあられみたいな涙を流しているからあなたが見ている空も見えないわ)




To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ ながむるは 同じ雲井を いかなれば おぼつかなさを 添ふる時雨しぐれぞ ~

なかなか逢いに行けない匂宮が中の君を想って詠んだ歌


 ~ あられ降る 深山みやまの里は 朝夕に ながむる空も かきくらしつつ ~

匂宮が通ってこないので中の君がもう飽きられたのかと落ち込み詠んだ歌




◇「時雨どころかあられみたいな涙を流してるって中の君ちゃんかわいそうだよ」

 匂宮も手紙では中の君に気持ちを伝えていますが逢いに行くことがかないません。


「宇治まで来たのに中宮さまに邪魔されちゃったの?」

 結果的にはそうなりますね。帝の皇子としてお出かけにもそれなりの格式や従者を備えないと「軽々しい」と思われてしまうようですね。

 匂宮自身は中の君や大君のことを親がいないからと見下すようなことはしていないのですが、明石の中宮をはじめ一般的には後ろ盾となる有力な身分の父親のいない女性との結婚は「ただのお気に入り」としか認識してもらえないようですね。権力者夕霧の娘との結婚が決まってしまいました。


「匂宮くんの意思じゃないってことはわたしたちはわかるけれど、中の君ちゃんや大君さんはショックだよね」

 もともと身体が丈夫でない大君はこのニュースでますます具合が悪くなってしまいました。



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47.6 恋の終わり

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