35.9 紫の上の病の原因

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 源氏が女三宮のところにいるときに、紫の上が亡くなったって突然二条院から使いが来るの。源氏はもちろん紫の上のもとへ急行するの。周りの女房たちが泣きわめいているんだけど、源氏は紫の上の死を信じないでお坊さんたちに加持祈祷をさせると、物の怪がそこにいた女の子に憑りついて、紫の上は息を吹き返すの。

 物の怪の正体は六条御息所だったの。まだ成仏できないで彷徨っていたら、このまえの琴の演奏会(女楽おんながく)の夜に源氏に悪口を言われたこと(才色兼備だけれど息苦しい)に腹を立てて紫の上に憑りついていたんですって。


~ わが身こそ あらぬさまなれ それながら そらおぼれする 君は君なり ~

(わたくしはこんな変わり果てた姿になってしまったけれど、知らぬふりをするあなたは変わらないわね)


「ひどい方ね」

 そんな風に泣き叫んだの。


 紫の上が命をとりとめたからみんな大喜びなんだけど、一番安心して泣いて喜んでいたのは夕霧だったのよね。

 死なないでくれた紫の上がどうしてもってお願いするので、源氏は紫の上に五戒(在家信者が守る戒律)だけ受けさせてあげるの。(正式な出家は認めない)

 源氏はなりふり構わない看病で疲れているんだけど、また紫の上が物の怪に憑りつかれないように毎日法華経を供養して六条御息所を成仏させようとするの。


 夏になっても紫の上の病は回復しなくて、あまりに源氏が嘆いているから、

「わたしはもういつ死んでもいいのだけれど、あなたのためにもう少し生きてみるわ」

 そんな風に紫の上は思うようになるの。


~ 消え留まる ほどやはべき たまさかに はちすの露の かかるばかりを ~

(蓮の露が消えないあいだは生きていられるかしら)

 庭の蓮を眺めながら紫の上がそんな歌を詠むの。


~ 契りおかん この世ならでも 蓮の葉に 玉ゐる露の 心隔つな ~

(約束するよ。この世だけじゃなくて生まれ変わっても同じ蓮の上に俺たちは生まれ変わるって。一ミリの心の隔てもないからね)

 今だけじゃなくて生まれ変わっても一緒にいようって源氏は約束するの。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 消え留まる ほどやはべき たまさかに はちすの露の かかるばかりを ~

紫の上が必死で看病してくれる源氏を想って詠んだ歌


~ 契りおかん この世ならでも 蓮の葉に 玉ゐる露の 心隔つな ~

源氏がこの世だけでなく来世までも愛を誓った歌



◇「なんか紫ちゃんの想いに泣けてくるね」

 源氏が女三宮を正室に迎えたことで絶望を味わったにもかかわらず、献身的に看病してくれる源氏を目の当たりにするとその源氏を捨てて出家もできないと思ったようですね。


「紫ちゃんが息を引き取ったとかってマジ焦った!」

「息吹き返してくれてよかった」

 源氏はもちろん喜んだでしょうけれど、涙を流して安心したのは夕霧でした。


「憧れの人だもんね。心配したよね」


 でもその紫の上を苦しめていたのはなんと六条御息所の怨霊でした。


「まだ呪ってたりしてたの? びっくりなんだけど!」

 六条御息所は第十四帖【澪標】で亡くなっていました。(14.4 明石の君とのニアピンと六条御息所の死)

 亡くなってもなお源氏を想い、源氏の周りの女性を憎んでいるのでしょうか……。


「いやちょっと怖すぎ……」



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35.10 女三宮の妊娠

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