12.5 都の朧月夜、須磨の源氏
✈✈✈Let' go to SenmojiGenji
自分との密会のせいで都落ちしてしまった源氏のことを想うと朧月夜はとても悲しかったんだけど、夫である朱雀帝の寵愛は変わらなかったの。それどころか心優しい朱雀帝は父親である桐壺院の遺言(何事も源氏と共に治めるように)に背くことになってしまったことを悔やんでいるくらい。けれども祖父の右大臣や母の弘徽殿大后には逆らえないのよね。
「私だって源氏がいないのは寂しいだから、あなたはどんなに寂しいんだろうね?」
帝が朧月夜にそう言うと、彼女はほろほろと涙を流すの。
「その涙はどっちの男のためなの?」
朧月夜がまだ源氏のことを想っているのも朱雀帝は責めるわけでもなかったので、それはそれで朱雀帝の優しさが朧月夜の良心を苦しめたみたいね。
須磨での寂しい夜に源氏は琴を弾いたり和歌を詠んだりするんだけれど、そうするとあまりの寂しさと都への懐かしさで周りの家来たちが泣いてしまうの。自分の都落ちのために自身の家族を都に置いて仕えてくれている家来のことを思ってこれからは少しでも皆の気持ちを紛らわして明るく振舞おうと源氏は思ったんですって。源氏は学問にも芸術にも優れていたんだけど、中でも須磨の浜辺を描いた絵は見事な出来栄えに仕上がったの。
都でも源氏がいなくなり、源氏を慕う声も聞かれたんだけど、弘徽殿大后はそういった発言も禁止するの。
二条院では紫の上が源氏の留守をしっかり守ろうと頑張っていたので家来の人たちも誰も辞めたりしないで紫の上にお仕えしようと決めたみたい。紫の上があまりにも美しくて誠実な性格で誰に対しても思いやりがあるので、源氏の君がこの方を特別に愛されるのも当然のことだわと納得したんですって。
To be continued ✈✈✈
◇宮中では源氏と浮気していた朧月夜尚侍が非難の的です。けれども彼女はめげません。歌人の俵万智さんは「あの天下の光る源氏がアタシに溺れたのよ」くらいは思っていたんじゃないかと書いています。源氏の須磨謹慎は朧月夜にとっては「オンナの勲章」だとも書いています。
「強いねぇ。朧月夜さん。まあそのくらい強気じゃなきゃ結婚したあとも密会デートなんてしないよね」
こまちちゃん、少し落ち着いてきたかな。
「うっるさいわね。カレに声もかけてもらえないあなたたちなんかとアタシは違うのよ。罪だってわかってても求められたアタシが魅力的ってことでしょ?」
朧月夜はこんな風に思っていたのかもしれません。
「あ――、思ってそう。思ってそう」
ただ逆に浮気を責めない夫の朱雀帝に対しては申し訳ない気持ちもあったようですね。
「「どっちの男のためなの?」はなかなかキツイ質問だよね」
でも朱雀帝は怒るどころか源氏が京を離れてしまったことをお父さん(桐壺院)の遺言を守れなかったと気にしています。
※参考文献 『愛する源氏物語』 俵万智 文春文庫
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12.6 明石の娘と須磨の嵐
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