12.4 都に残された人たち

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 京の紫の上は起き上がれないほどの落ち込みようなの。源氏が使っていた道具、弾いていた楽器、脱いでいった衣服までもそのままにしていて、まるで死んでしまった人のように扱っているの。心配した女房は紫の上の親戚にあたる僧侶(源氏と出会うきっかけになった北山のお寺にいる人。紫の上のおばあさんの兄)にお願いして祈祷をしてもらうの。紫の上の心が鎮まるように。また源氏との幸せな日々が戻ってくるようにって。

 源氏がよくもたれかかっていた柱を見るだけで紫の上は胸が悲しみでふさがれるんですって。小さい頃からいつも一緒で時にはお父さんがわりでもあり、お母さんがわりでもあり、今は夫である源氏が恋しくてならないのね。


 藤壺の宮さまも東宮を護るために源氏が謹慎していることを嘆いているの。源氏への想いもあるから宮さまの心境はフクザツよね。宮さまが出家する前は源氏がまた大胆な行動に出られると困るから必死で自分の気持ちを封じていたけれど、出家して男女の関係を結ぶ可能性がなくなってからは源氏への返事も情愛が出てきたみたい。

「(あなたのために)涙を流すことがわたくしの仕事だと思っています」

 こんな手紙を源氏に送るの。


 紫の上からの返事には一緒に衣替えの衣装も添えてあって、色も仕立て具合も源氏好みで素晴らしいんですって。


~ 浦人うらうどの 塩汲む袖に くらべ見よ 波路隔つる 夜の衣を ~

(あなたの袖と比べてみて。遠く離れた都で夜ひとりで泣いている私の袖と)


 見事な女性に成長した紫の上のことが昼も夜も恋しい源氏は彼女を須磨に迎えようかとも思うの。


 左大臣は息子の夕霧の様子をいろいろと知らせてくれたみたい。


 伊勢に行ってしまった六条御息所とも手紙のやりとりはしているみたいなの。元々は愛し合っていたのに御息所が生霊になってしまうというアブノーマルさに恋人関係を終わらせたけれど、源氏はそんな風にさせてしまったのは自分のせいだと心苦しく想っているんですって。


 困っている花散里に経済援助をしてあげたりもしていたの。都に残してきた大勢の人達と手紙をやりとりしていたのね。今までの罪を悔い改めるための勤行の生活を送りながらね。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 浦人うらうどの 塩汲む袖に くらべ見よ 波路隔つる 夜の衣を ~

紫の上が源氏に贈った歌



◇都に取り残された紫の上の哀しみようがいたわしいですね。藤壺の宮も源氏が東宮を守るために謹慎していることをわかっているので源氏の無事をひたすら祈っています。


「紫ちゃん、起き上がれないなんて相当ショックなんだね」

 ずっと同じ家で過ごしてきましたからね。


「許すまじ、源氏」

 やっぱりその判決になりますか……。

 


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12.5 都の朧月夜、須磨の源氏




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