12.2 紫の上との別れ

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 左大臣家以外にも挨拶に行くところがあるので、紫の上にはいろいろな人とのお別れで忙しくてね、なんて源氏は言い訳するの。

「あなたが都からいなくなってしまうこと以外に悲しいことなんて私にはないわ」

 なんて紫の上が言うから、この人が一番自分のことを想って悲しんでくれているんだなって源氏はしみじみ思うの。


 紫の上のお父さんの兵部卿宮ひょうぶのきょうのみやは右大臣に目を付けられるのを恐れて娘と距離をおくようになり、手紙すらくれなくなったの。兵部卿宮の正室は紫の上の不運を喜んだくらい。(紫の上は正室の子ではないの)

 実の親から見放された紫の上を源氏は

「もし京にもどることができなくなったら、どんな家だろうが必ずキミを迎えるから」

 と約束をして慰めたんですって。


 出発の準備やら親しい人とのお別れやらで疲れ切っていた源氏は鏡に写った自分を見て、痩せたな、哀れだなって思ってこんな歌を詠んだの。


 ~ 身はかくて さすらへぬとも 君があたり 去らぬ鏡の かげははなれじ ~

(俺は須磨へ行ってしまうけれど、鏡に写った姿をキミのところに置いていくよ)


 ~ 別れても 影だにとまる ものならば 鏡を見ても なぐさめてまし ~

(あなたがいなくなっても鏡にだけでも姿が残っているならずっと眺めていられるのに)


 紫の上はそう詠んでまた涙ぐむの。その優雅で美しい姿に源氏はやっぱり彼女のことを一番愛しているんだなって思ったらしいわね。


 源氏はもし戻ってこれなかったことを考えて財産などを紫の上に託して出発の準備をするの。自分の家来たちにも待っていてくれる者は紫の上に仕えるようにと言うの。



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

 ~ 身はかくて さすらへぬとも 君があたり 去らぬ鏡の かげははなれじ ~

源氏が紫の上を想って詠んだ歌


 ~ 別れても 影だにとまる ものならば 鏡を見ても なぐさめてまし ~

紫の上が源氏との別れを惜しんで詠んだ歌


◇少女のときに略奪まがいに源氏に連れてこられました。源氏の理想どおりに育ち、結婚し、今では「源氏の最愛の妻」になりました。ずっと一緒だった源氏との別れは紫の上にとっては不安で不安で仕方ないようです。


「紫ちゃん……」

「ひどいよ。源氏くんのせいでなんで紫ちゃんが悲しい想いするの?」

 

「どんな田舎でもさびれていてもいいから一緒に連れていって」

 と泣く紫の上が可哀想です。


「源氏くんのバカ! アホ! おたんこなす!!」

 おたんこなすって可愛らしいですね。


「お母さんに言われるんだもん……」




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12.3 須磨へ


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