8.2 あの子は誰?

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 女の子は相手が源氏ってわかって、ふたりは一夜を一緒に過ごすのだけれど、自分の名前や身分は明かさなかったの。

「それじゃラブレターも贈れないし、連絡先アドレス教えてよ」

 なんて源氏は頼むと

「自分から探そうとはしないわけ?」

 と彼女は言うの。結局名前も教えてはくれないし、朝になってしまうし、お互いの扇子だけ交換したの。


 さて、この扇子の持ち主は誰なんだろう。源氏は気になっていろいろと推理するの。

 弘徽殿にいたのだから、花宴を見に来ていた弘徽殿女御の妹だろうけど、妹は何人かいる。処女バージンだったから未婚だ。中には東宮さまに入内じゅだい(お嫁入り)する予定の人もいるからそのコに手を出してしまったとしたら何かとヤバい。元から弘徽殿女御やその父親の右大臣からは嫌われている。

「あの子が東宮妃になる子だったら、ちょっとヤバくね?」

 かといって責任をとってあの子と結婚することにすると、あの右大臣から婿扱いされることになり、それも面倒くさい。ひとりでああでもないこうでもないと考えていたみたい。

 交換した扇(彼女の扇)は桜色でかすんだ月が描かれているの。


~ 世に知らぬ ここちこそすれ 有明の 月の行方を 空にまがへて ~

(こんな気持ちは初めてだよな。夜明けの月(キミ)はどこにいるんだ?)


 一方で二条院の紫の君は賢く愛らしく成長しているの。随分子供っぽいところもなくなってきたみたい。他のところに出かけたりしないでと泣いて困らせることもなくなったの。

 正室の葵の上との冷めた夫婦仲は変わらないの。葵の上の家に行っても会ってくれないから代わりに葵の上のお父さんの左大臣と話しているみたい。(お父さんが気を使ってお婿さんの接待をしている?!) 


 あの夜の女の子は物想いにふけっているの。そう、彼女が東宮さまのお妃になる子だったのだけれど、あの源氏と過ごした夜のことが忘れられないの。恋の病、かしら?



To be continued ✈✈✈


🖌Genji Waka Collection

~ 世に知らぬ ここちこそすれ 有明の 月の行方を 空にまがへて ~

源氏宰相中将が素性のわからない女の子のことを想って詠んだ歌



◇一晩一緒に過ごした彼女。どこの誰かも連絡先も教えてくれない。

「気になるなら自分で探し出してみて」

 こんな風に言われたら源氏の恋の炎は燃え上がってしまいます。お母さんをいびった弘徽殿女御の妹、それに彼女のお父さんは右大臣で源氏の正室(葵の上)のお父さんが左大臣なので政敵の娘になります。

 ミステリアスな彼女に政敵の家柄、そして自分のお兄さん(春宮さま)の婚約者。恋のハードルがいくつもありますが、だからこそ盛り上がってしまうのが「恋の病」なのでしょうか。


「出たよ。源氏くんの障害があると盛り上がるクセ」

 こまちちゃんのため息がこぼれます。

「でもこの女の子も『自分で探したら?』とか言って連絡先教えないなんて恋愛スキル高くない?」

「自分に自信がないとこんなこと言えないよね」

 そうかもしれませんね。


NEXT↓

8.3 探し出した彼女



☆こまちのおしゃべり

【別冊】源氏物語のご案内

源氏物語エッセイだよ。今回は「好きな男子の探し方」💕

女の子はお出かけできないし、どうやって恋するのかな?


源氏の世界⑤ 好きな男子の探し方

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881765812/episodes/1177354054882122170










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