5.2 禁断の恋

✈✈✈Let' go to SenmojiGenji


 そんな頃、藤壺の宮さまが宮中からご実家にお宿下がりされたの。今で言う帰省みたいなものかしら。源氏は今がチャンスとばかりに藤壺の宮さまのお付きの女房の王命婦おうのみょうぶに協力してもらって、藤壺の宮さまのところに忍び込むの。父である帝を裏切って。命をかけて。


 藤壺の宮さまも過去に一回だけ犯してしまったその罪をもう一度は重ねられませんと源氏を拒むのだけれど、ふたりは結ばれてしまうのよ。犯した罪の重さにおののく宮さまだけれど、柔らかな魅力があって最高の女性だ、欠点がひとつもないから死ぬほど惹かれるんだ、と源氏はひとり盛り上がっちゃってるのよね。永遠に夜が続いてほしいなんて源氏は願うけれど、残念ながら別れの朝はやってくるわね。


~ 見てもまた 逢ふ夜稀なる 夢の中に やがでまぎるる わが身ともがな ~

(やっとこうして想いを遂げられたけれど、また逢えるなんてきっと叶わない夢だからこの夢の中に埋もれてしまいたいよ)


~ 世語りに 人やつたへん 類ひなく 憂き身をさめぬ 夢になしても ~

(覚めることのない夢の中での出来事だとしても知られてしまうのが心配だわ=恐ろしい罪を犯してしまったのだわ)


 一晩過ごしたあとで源氏は自宅の二条院に戻って2,3日引きこもってしまうの。宮さまに手紙を出しても、「ご覧になりませんでした」との王命婦からの返事しかないのね。源氏も想いは遂げられたけれど、これからのことを思うと辛い気持ちの方が強かったでしょうね。お互いに好きでいても、現帝の女御(きさき)と帝の息子。とんでもない罪の関係だものね。


 藤壺の宮さまは思い悩む日々が続き、体調もよくないのでずっと実家に滞在していたんだけれど、妊娠がわかってしまうの。あれ? 時期的に今頃? なんて宮中で帝も思われたのだけれど、物の怪もののけ(人にとりつく霊)のせいでしょうなんて言ってごまかしたの。もちろん、源氏も協力した王命婦も生きた心地もしないで、恐ろしくなってしまうのね。そして藤壺の宮さまはいつまでも実家にいるわけにもいかず、恐ろしいほどの罪悪感の中、宮中に戻られたの。


 源氏は以前変わった夢を見たときに、占者を呼んで夢解きをしてもらったことを思い出すの。その占いでは将来帝になる子が産まれるって言われたの。源氏は元皇子でも今は臣下なので、臣下の子どもが帝になるなんてことは有り得ないのに、占いにはそう出たのね。


 でもこうして藤壺の宮さまが妊娠なさったことを知ると、それってあの夢占いがあたったんじゃないかって源氏は思うの。藤壺の宮さまが産む子どもなら帝になる可能性はあるものね。あくまでも桐壺帝の子どもとしてなんだけどね。

 源氏は自分の子を妊娠している藤壺の宮さまに逢いたいと王命婦に何度も頼むんだけれど、断固としてとりあってくれなかったの。


 宮中に戻ると、最愛の藤壺の宮さまのご懐妊だから帝はますます宮さまを大事になさって、しょっちゅう藤壺にお通いになるの。そしてそろそろ体調もいいようならと、藤壺で音楽の遊びをしようと源氏達若い人たちを呼んで琴や笛を演奏させたの。もちろん源氏は何事もないように振舞ったけれど、時々見せる切ない様子に藤壺の宮さまは気づかれたみたいで、やっぱりお互いツライ想いをしたみたいね。決して誰にも言えないものね。

 

To be continued ✈✈✈



◇とうとう源氏と藤壺の宮さまが一線を越えてしまいました。というか本文にも書かれていますが、どうやらこのときが2回目らしいのです。けれども最初に関係を持った記述は今までの巻にありません。

「最初の密会部分が抜け落ちたのか?」

「幻の巻があるんじゃないか」

 源氏物語の研究者たちの間でも議論がかわされているみたい。現存する五十四帖には綴られていないエピソード。ミステリーですね。


「なんかさぁ、源氏くんが好きになる人ってヒトヅマとか小さい女の子とかお父さんのお妃さまとかワケアリの人ばっかりじゃん」

 障害があればあるほど燃え上がるタイプなのかしら。源氏くん。

「奥さんの葵の上さんと仲良くしようとはしないのかなぁ」

 ちっとも打ち解けてくれない奥さま。こちらもある意味障害? ですけれどね。


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5.3 理想の女の子に育てる?

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