募血お願いします〜夜に俺の家にやってきた吸血鬼のお話〜

作者 千石京二

闇の眷族との邂逅(※本当に邂逅するだけ)

  • ★★★ Excellent!!!

一人暮らしの青年と、眉目秀麗な吸血鬼との、出会いと別れの物語。
本当に、本っ当にただ出会って別れるだけの、でも壮大な悲劇です。
誰も悪くない、むしろ目一杯の善意や思いやりに溢れた物語なのに、誰ひとり報われることのない結末。青年は心に深い傷を負い、吸血鬼の危機は解消されないまま。一体なにを恨めばいいのか、いや恨まれるべきものなどどこにも存在しない、優しい世界であるが故に浮き立つこの行き場のない悲しみ。
物語が始まらない、という悲劇。というか、悲しい喜劇。いうなら『死ぬほど丁寧に書かれた壮大な肩透かし』です。
笑いました。なんでしょう、このなんとも言えない脱力感。
終盤、オチを確定させた後の処置というか、あの辺りの雰囲気の醸し方が最高でした。例の単語が出た時点でうっすら予想していたはずなのに、でもまさかこんなに悲しい光景が待ち受けているなんて。
結びの部分、なんとなくいい話風にまとめるところも好きです。強く生きる姿勢というか、もう無理矢理前を向いていく感じ。いやお前いま最大のチャンスを逃した直後なのでは? だって実質もう惚れてるよねこれ? という、その辺も含めて(含めずとも)、いろいろ虚無感の漂う結末でした。

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