穏やかな喪失

不意に気付いた時には

大事なものが

ごっそりと削られて

なくなっている


いつの間に?

少しも感じなかった

こんなに大きな喪失を


いったい

誰の仕事だろう

鮮やかで

さりげなく

それでいて

致命的な

確実な仕事


今もどこかで

誰かが何かを

失っているだろうか

気づかずに?


実は人間なんて

狭い範囲しか

理解できないのかもしれない

自分自身でさえ

把握できない

迂闊で

いい加減な

意識という錯覚


どんなに目を配っても

失われるものは

失われる

奪われるものは

奪われる


それらは

なくなってから

初めて意識に

浮上してくるのだ

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