第352話 そこは

 俺は吐き気と頭の痛みに呻きながら目覚めた。


 何時もの事だが、また誰かの死者蘇生をしたのだろうと思う。

 今は外にいるようだった。風が吹き付け、何かが燃えていて、人の肉と血の匂いもする。嫌な予感しかしない。


 また、俺に覆いかぶさるようにしていた誰かの死体があった。それと俺の左脚がない。


 空では2頭のドラゴンが戦っていた。青いのと一回り大きい赤黒いのだ。


 生きている人の気配が地下からする。辺りは死体だらけだった。急ぎ欠損修復をし、俺に覆いかぶさっていた死体を収納に入れた。

 瓦礫を掻き分けながら、何とか地下の階段を見付けた。


 状況がよく分からなかったので、先ずは情報を得ないとどうにもならない。多分上空で戦っているドラゴンのうちどちらか又は双方が敵だと思うのだが戦う相手が分からなかったのだ。


 階段を降り、重いドアを開けた。すると泣きながら中学生位の少女が抱きついてきた


「姉様達が、姉様達が沢山死んじゃった。助けて!」


「済まないが、状況が分からないんだ。みんなの所に連れて行ってくれ。大人はいないのか?」


 泣きながら案内されたのは、一種のシェルターだった。


 俺が中に入ると歓声が上がった。100名前後の少女達だ。

 トリシアとレフトアイが駆け付けたが、リギアとライトアイがいない。


 トリシアが取り乱しているし、手が曲がっていた。

 そして皆、煤まみれだった。

 俺は最近使えるようになったエリアヒールとクリーンを掛けて、皆の怪我を治し綺麗にした。


 多分死者蘇生が複数人に可能になったあとに同じく可能になったようだ。


「2人が、2人が死んじゃったの。沢山死んじゃったの」


「落ち着け。大丈夫だから。ちょっと待て」


 俺は、俺を庇って死んでいた者を収納から出した。殆ど見分けが付かない位焼けただれていたがアクセサリーから誰か分かったようだ。


 誰かが叫んだ。


「いやー!レオナ姉様」


 誰か思い出した。


 余りに死体が酷かったので、欠損修復で腕を再生し、切り落としてから体全体を再生した。今は死者蘇生をする時ではないのでとりあえず収納に入れた。


「一体何があった?」


 今いるのは若年層のみだ。年長者が居ない。


 レオナは俺をここに連れて来ようとしていたらしい。


 レフトアイが説明をしてくれた。


 俺が死者蘇生をして気絶していて、一番上の部屋に寝かせて少ししたら、いきなりで屋敷が襲われ、俺も吹き飛んだらしい。


 上の階がごっそりやられたらしい。

 20歳未満の者は死者蘇生の様子をホールで見ていたらしい。また、死者蘇生した3人は何とか地下に連れてこれた。ちゃんと生きていたのだ。


 レフトアイによるとライトアイとリギア、レオナが決死隊として俺を救いに向かったと。トリシア達は若年者の護衛をせざるを得なかった。


 レフトアイとトリシアは若年層を避難させていたが、年長者が怪我人を助けに向かった。


 ヒナタは迎撃に向かったが、2撃目の攻撃で屋敷の地上部分がほぼ消えたらしい。


 若年層を地下に避難させ終わる時に、リギア達が死んだのをトリシアは見てしまい、何とか片腕の骨折で済んだが、助けなきゃと向かおうとしていたのをレフトアイが必死に中に入れ、重い扉を閉めたと。


 多分レオナは俺を見付け、攻撃から命懸けで俺を守ったようだ。恐らく20歳以上は全滅していると言う。125人がいないというのだ。


「分かった。ヒナタは青いよな?黒い方が敵だな。俺が倒してくる。それとこれを仕分けてくれ。生きている者のは袋に入れ、死者の分は並べておけ」


 レフトアイに皮膚片を託した。戻り次第肉体を再生する為だ。


 外に出ようとした俺を皆が止めに入ったが、ゲートで外に出て追いかける者を押し留め、俺は許さんと叫びながら飛ぼうとしていた。しかし、ついにヒナタが力尽き落下し、落下しながら犯され掛けていたのが分かり、そいつの一物の前に転移をし、ライトソードを一閃し、そいつの一物を切り落としたのであった。


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