第321話 待つ辛さ

 最後のダンジョンにブラックオニキス全員を含め連れて来ていて、さあ入ろうとした時セレナが


「あのー、志郎さん。今回は私もダンジョンに入りたいの」


 普段俺の頼みでサポートに徹しているセレナが、自分の意見を初めて言ってきた。


「珍しいな。じゃあ一緒に入るのか?」


「うんうん。今回は志郎さんが留守番をして貰えないかしら。私がダンジョンに入ってしまったらテレポート出来なくなるの。たまには私にも戦わせて欲しいの。駄目かしら?」


 俺にはセレナの頼みを断れない。あのセレナがやる気になったのだ。


「大丈夫なのか?無理をしてはいけないんだぞ。怪我をするかもしれないんだぞ」


「ふふふ。心配してくれてありがとう。でも大丈夫。私は元々薙刀をやってたのよ十分戦えるわ。たまには休んでいて、皆が戻るのを待っていてね」


 俺は押し切られ、送り出した。


 普段セレナが担っている事を代わりにやるのだ。


 不安と心配で落ち着かない。取り敢えずこのダンジョンの入り口付近で一人で待つ。


 そう言えば一人になるのはいつ以来だろうか。


 セレナはいつもこんな不安な思いをして皆を待っていたのか。まだ1時間も経っていないが、不安で落ち着いていられなかった。

 何もせずにただただ待つのがこんなに不安だとは思わなかった。


 どうあがいても翌日まで出て来ない。


 仕方が無いので子供の相手をする事にした。

 たまに相手をしないとすぐに、父親だと認識しなくなるからだ。


 クロエに叱られた。

 落ち着きなさいと。

 そしてクロエからは子供が欲しいと言われ、なるべく早く子を抱きたいと。ギルドは産休でも大丈夫だからと、俺の心配はそこじゃないのだが、他にもメイベルも子供が欲しいとねだってきた。


 3人目の子を皆切望していた。

 今日はクロエと向こうのダンジョンに近い街で過ごした。念話が入っても直ぐに対応出来るようにだ。


 相変わらずクロエは俺の扱いが上手い。

 鞭と飴の使い方が絶妙で、落ち着けと叱りつけながら、


「よく我慢して送り出したわね。偉いでちゅよ。おいで坊や」


 今日はなんとか気が張っていてばぶらなかったが、クロエの胸に顔を埋め、その心臓の鼓動を聞きながら落ち着かせてくれた。


 ダンジョンに入っている妻達には申し訳ないと思いつつ、クロエと子作りに励んでいた。


 ただ確信した。今日の子作りで身籠ると。何故か分かるのだ。

 子種を送り込んだ後、お腹に手を当て、


「丈夫な子に生まれてくるんだよ」


 こう言ったのを聞いたとクロエが言ってきたからだ。今までもそうだ。果てた後、その時の子種で身籠る時にトランス状態の俺がそうしていたのだと言うのだ。その後はぐっすり眠り、翌朝まで起きないのだという。


 いそれのお陰で眠る事が出来たのであった。


 そして昼過ぎに1つ目のダンジョンを攻略したと水樹から連絡が入ったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る