第295話   悲劇

 悲劇は起こるべくして起こる。今回もそんな出来事だった。


 先程助けた天使の一人、他の天使と毛色の違う者が一人いた。生き返らせた中で唯一幻影が見えた俺をすけこましと見破った者だ。沢山の天使とお別れをしていた。そう、今のように。


 彼女が俺に訴える。急いで皆を転移局に連れて行く必要があると言うのだ。特に彼女が俺の心を掴む。外観も仕草も全て。率いていた天使達を守ってあの場に何とか逃げ込んで籠城して救助を待っていたと。


 名前が発音出来ず、俺が新しい名前を付ける事になった。


 リリイと名付ける。

 彼女以外の他の者との幻影がどうしても思い出せない。


 転移局に俺も行くが、悲劇が起こった。


 助けた30名が着飾っていたのだが、リリイが全員とハグをし、転移局にある台の上に皆横になる。


 俺はよく分かっていなかった。新たなハーレムメンバーが一気に増える期待に胸を膨らませていたのだがリリイが、


「皆志郎様に感謝をし、新たな世界での生を全うしてください。縁があれば先の星に転生し、志郎様と会えるかもです。ムッツリさんなので皆さん気をつけてくださいねくださいね。いってらっしゃい」


 俺が唖然としていたが、30名もの美女が目の前から消えたのだ。


 これを悲劇と言わずに何というのか。目から血の涙が出た気がする。


 俺が涙して残念がっているとリリイが


「残念がらないの。いずれあなたの元に集うわ。天界を取り戻したら私もむっつりさんの所に嫁ごうかしら?改めて感謝をいたしますわ。5級天使のリリイですの。志郎様のお陰でかけがえのない魂の転生に成功しましたわ。そんなに残念がらないの。私は貴方の元に残るのだから。それとも私はお嫌?」


 俺の頬を撫でる。


 俺はハグし


「一度死なせてしまって悪かったな。怖かったろう。彼女達の健やかな転生を祈るよ。俺の子供になるなんて落ちはないよな?」


「それは大丈夫よ。彼女達はあなたって秘密よ。ふふふ。危ない、危ない。本当に感謝してるのよ」


 色々聞いたり確かめたが、どうやら彼女は戦闘能力が天使達の中では飛び抜けて強いようだ。


 暫くは俺の案内役をお願いした。一緒に戦う事になるから戦える者の同行は有り難い。

 一度死者蘇生に備えて体の一部を斬らせてと頼むと、左腕を自ら切り落とし渡してきた。眉一つ動かさなかった。


 慌てて欠損修復を行う。腕も欠損修復し予備の体を作る。服を出して自分自身に着させた。


 俺は自らに目隠しをして裸を見ないようにしていたが、紳士だと驚き、むっつりさんと言ったことを侘びてきた。


 今まで体の予備を作る時はスリープで眠らせてからだった。意識がある時に切り落とした事がなく、勿論自ら切った者はいなかった。傑物認定だ。


 ついつい呟いたのだが、


「君みないな女性が俺の妻だったらな」


「勿論貴方の妻になるわよ。今のがプロポーズよね?お受けいたします。天界を取り戻したら奥様の一員にしてくださいね」


 プロポーズした事にされた。

 彼女はオリヴィアの同期だった。ただ、親が上級天使だったので昇級が早かったと。


 オリヴィアは彼女なら喜んでソウルメイトになると言う。


 今は領地を取り戻すたびにアースウォールを展開し、進んでいくの繰り返しになる。ウォールには大量のサラマンダーを出して守らせ、近づく奴らは駆逐する感じだ。


 予定では2ヶ月で完了しそうだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る