第197話おっさんの正体

 俺は思わず「へ?」と情ない呻き声を出す。


 おっさんは先を続ける


「驚く事の程でもなかろう?儂はな世界貿易センタービルに短大の卒業旅行で行っていてテロに巻き込まれたのじゃよ。飛行機が突っ込んだと聞いて必死に階段を降りていたが、ビルが崩れて死を覚悟したらこの世界に居たのだよ」


 短大って2年だよな?そうすると当時20歳位か?日本からの転移以外にあるんだな。因みにこの世界に来てから何年だ?」


「そうじゃのう、確かもう時期3年の筈だ」


「?時間軸がおかしいな。確か20年位前の出来事だぞ」


「そんなに経っておるのか。この世界で目覚めると頭にエラーメッセージが聞こえてのう、転移を失敗しました。既に他の魔王がいる為魔王になれませんでしたとか聞こえたののだよ。魔法を封印されました。解除するにはこの体では無理ですとかな。恐らく向こうに戻れたら人間の体に戻れるのだろう。儂が向こうに戻りたいのは人間の体を取り戻したいからじゃ」


「そうか、おっさんも大変だったんだな。出来るだけ協力するよ所で下の名前は?」


「ヒロミじゃが」


「じゃあ宜しくなヒロミ!俺は志郎と呼んでくれ。所でその外観は流石に違うよな?」


「うむ流石にな。160cmで痩せておるでな。純粋な日本人じゃから黒目黒髪じゃぞ」


 俺はおっさんじゃなく若者と理解出来、俺の事を45歳からの転移と説明する。

 ヒロミには言わなかったが恐らく向こうには戻れないと確信している。そう言えばショッキングな事を言われたっけな。


 俺と握手をした時に何かの幻影が見えたと。どうやら水樹と俺とセレナでダンジョンをアタックしていて、その時の事だ。水樹と思われる者は20歳位だったと。


 確かに俺もぼんやりと覚えている。水樹達と一緒にダンジョンに潜っているが頭を打ったせいかあまり覚えていない。男いたっけな?少なく共、今のキングの格好のや変化の衣で今見えている姿の者は見えなかった。見覚えのない女もいたかもだが、髪が長かったから女と勘違いしたのか?良く分からない。


「なあ風呂にでも入るか?一緒でも別でもよいが、別に入るなら使い方を説明するけど」


「では風呂場を見せて貰おうかのう」


 そうして風呂場を見ると


「残念ながらちと一緒は厳しそうじゃのう」


「そのようだな。じゃあ魔力のチャージから・・・」


 そうやってバスタオルとタオルをを用意してフロ場を後にした。


 そういえばあの和服見覚えがないな?ヒロミの収納にあった唯一着れそうなのがあれなのかな?


 俺も入れ替わりで風呂に入り、その後肉体再生と隠密のスキルを付与した。何故かヒロミは失禁し俺も出てしまった。とても驚かれ、恨めしそうな目をされたし、悲しげな目を。そしてクリーンをかける。エラー的な存在がそうさせているのだろうか?


 そう言いつつも明日からダンジョンを進んでいく。俺達二人なら五体満足からスタートすれば大丈夫だろう。ヒロミには言っていないが念の為回収したカラダの一部は収納の中だ。欠損修復が有れば体の一部から肉体を再生できる。一応俺の命を優先する事としたのだが、それは死者蘇生があるからだ。


 まだ死者蘇生の疲れが抜けないので早々に眠る事にしたのであった。

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