第187話 新たな旅の始まり

 バルバロッサの戦いが終わり、復興がスタートして既に2ヶ月が経過した。明日はチャカハーンとのデートだ。年齢からもう少し早く刻印を刻んであげたかったが、復興の中心人物の一人だった為に今まで結婚をするどころではなかった。まだまだ復興には時間がかかるが、ようやく休みを取れる位に落ち着いてきた。

 一旦ボレロからセレナとブラックスワン、レニス達とバトルシップでおっさんのいるなんとかいうダンジョンに向かって貰う事にした。


 一旦復興の特別体制を解除し俺も明日から暫く休暇だ。休暇と言っても妻達のご機嫌取りに右往左往する日々になりそうだった。


 ルシテルは総督を辞めたがっていた。候補者を探しているが一人心当たりがある。ワーグナーのあいつだ。そうタオだ。アレイ殿は高齢過ぎる。

 俺が信頼できる奴で裸の付き合いをした仲だ。


 セレナ達を送り出した後、クロエ、オリヴィアを伴いタオ、アレイ殿、奥方を呼んで昼食にしている。まだ屋敷が出来ていないのでタオの所での昼食だ。


 まあなんの変哲もない昼食を装っているが、定番のアレイ殿が告知するタイミングを崩してくれる。食後にさあ解散かなと言う時にしれっとさも大した事もないかのように言い驚かすつもりだったが、妙に鋭いこのおっさん、いや爺さんが食事を始めた直後に


「そう言えば単に食事の為に今ここに来たのとは違うのじゃろう?」


「愛する妻の肉親とたまには食事をと思ったのですが駄目ですか?」


「ほほほほ。儂を試しておいでかな?儂は暇人じゃが主はそうではなかろう?バルバロッサの復興が一段落したのであろう?今のタイミングじゃとバルバロッサの統治の相談かのう?」



「あちゃーやはり分かりますか?流石ですね!ビンゴですよ!」


「ふぉふぉふぉふぉ。タオよお主はどう見る?」


「そうですなあ。グリーンウッド家はもうルシテル嬢しか生き残ってはおらぬし、婚姻の話では無いでしょうから、はてなんでしょうな?」


「よく事情に精通されてますね。やはり女性の尻を追い回してるのはカモフラージュですね」


 クロエがさらっと


「まあお兄様もそろそろ腰を落ち着ける頃ですよ。貴族の娘を誑かすのもそろそろ潮時ではなくて?」


「まあバレてるならしょうがないですね。ズバリ聞きますが、タオ殿、バルバロッサの総督を引き受けてくれませんか?」


「ぶふー」


 俺の申入れはアレイ殿とタオの斜め上だったらしい。アレイ殿が珍しく噎せていた。


「おやおや予測しておいでかと思いましたが?」


「流石にこれは予測できぬぞい。良いのか?儂の愚息で?」


「アレイ殿が思う程タオ殿は抜けていませんよ。人望も厚いし。人情に厚い。暫くアレイ殿に指導して貰えれば大丈夫でしょう?」


 動揺したタオは


「あ、あの、わ、私がですか?務まりますか?その前にルシテル嬢は?」


「まあ落ち着いてください。総督なんてどーんと構えていれば良いのですよ!特にバルバロッサではルシテルが俺の妻なので、皇帝に従順な総督という体であれば領民を治められますよ。ルシテルが総督を降りたいというのです。表向きは皇帝の妻だから状況が落ち着くまでの一時的な就任としての引退としますが、実際は大陸を巻き込んだ事態を招いたグリーンウッド家は政治の第一線から退くべきとの判断なのです」


 そんなこんなで半ば強引に総督を押し付け、もとい引き受けて貰った。

 クロエに後で思いっきりほにゃららな感謝をされ、泣かれてしまった。


 俺は俺で留守の間の体制を築くのに四苦八苦していて、皇帝は政治に口出しは出来るが、国難レベルの事がなければ政治に参加しないスタンスを考えていて、魔王の問題をやっつけたら悠々自適な生活を希望している。冒険者としてやって行きたいのだよね!皇帝なんてキャラじゃないし!

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