第158話 ダンジョン6日目

 心地よい目覚めだ。但しここがダンジョンでなければ。


 ダンジョン内、でいつものというのはおかしな話ではあるが、もう数日間同じような朝を繰り返しているのだ。


 俺はテーブルの上にいつものように食事を出していく。

 そしていつものようにダンジョンを進む。


 代わり映えのしないダンジョンに、皆が辟易としている。

 このダンジョンの最下層はおそらく100階層だ。まだ30階層もあるのだ。そりゃあ気が滅入るさ。


 そうはいっても、サクサクと進み、今は70階層のボス部屋前で休憩中だ。


 作戦はいつものようにアイスウォールで囲み、俺が次元刀を試す。無理なら普通に斬り結ぶだ。最悪、時間停止を使う。


 ただ、次元刀には大きな欠点がある。使用後に数秒意識が飛ぶのだ。


 強力なスキルだが、制約が厳しい。なので、俺が次元刀を使ったらアリゾナが俺を援護し、クレアが俺をその場から引き離すようにする。


 いよいよ70階のボスだ。


 前回の奴の背丈を参考に次元刀を発動して、首を切断するつもりだ。


 扉を開けると、やはり同じだ。

 アイスウォールを展開し、内部にもアイスウォールを出しまくる。

 そして熱湯を注ぎ、転移が終わるのを待つ。


 転移が終わると同時に俺は次元刀を発動した。首を切断したと確信した。すると


「次元刀をダッシュしストックしました」


 と聞こえてきたが、俺は同時に鋭い痛みを覚え、倒れていった。


 そして倒れながら信じられない光景を目にした。


 ホーリーエンジェルアーマーを着ている奴が首を無くし、立ったまま血を吹き出しているのだ。


『誰だ奴は?』

 と思うが俺の体が動かない。声も出ない。


 左腕に握られているのはアンタレスだと気が付き、俺は自分の首が胴体とさよならしているとようやく理解した。


 視界が段々暗くなる。


 死ぬのかな。そんなふうに感じたが


『いやいやいやいや、幻影だとセリカと致している最中ってのがあったぞ。セリカと致すまでは死なない筈だ。考えろ俺』


 死に行くさ中でもしょうもない俺である。最後の力を振り絞り、考えた結論をおこなった。

『欠損修復』

 そう念じたが、まもなくブラックアウトしたのだ。最後に 『やっぱりセリカと致すまで死ねるか!』と腐った奴だった。

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