第五章
第85話 旅立ち
2日目(day35)
女神達?の夢を見た。
誰かを必死で探して呼び掛けている。私の名前を呼んでいるのだ、それも必死に
「ランス、どうかどうか返事を。お願いだから一言で良いので返事をううお願い」
と泣いていたのは綺麗なハーフエルフの若い女性て、周りには他に女性が数人居る
「ナンシー無理しないで、彼は何故かかなり遠くに居るのよ。魔力不足で念話は無理よ。でも生きてはい・・・」
夢の途中だが目覚めた。
朝だった。『知らない天井だ。』以前も有名なテンプレを言った気がする。
目が覚めるとセチアが俺の背中に抱き付いていた。
『そう言えば夢に出て来たのがナンシーさんか。とんでもなく綺麗だったな。俺の事を探しているのか』
気がつくとそう呟いていた。それとずっと思っていたのだが不思議な感覚だった。セチアが私の奴隷となってから彼女の存在や居場所を何となく感じる。それと同じような感覚が遙か彼方にうっすらと感じ取れる。
念話というのを試してみよう。
「誰か私の声が聞こえますか?」
一言いうと何かがごっそり持っていかれて急激に頭が痛くなりふらふらになった。何故分かるか不思議だが魔力の殆どを持って行かれた。『まだかなり早い時間だ。少し休もう』
と思い30分程そのまま横になっていた。背中に胸の感触が感じられるが、それよりも温もりが心地良かった。私は何故か上を着ていない。そう言えば背中には生の胸が当たっている感じがして恐る恐るセチアを見ると裸だ。
『俺あんなに格好付けといてやっちゃったのか』
と自己嫌悪しているとセチアが目覚めて、挨拶と経緯を説明してくれた。
その前に胸を隠そうとしないので、上着を無理矢理着せてあげた。
どうやら私はうなされていて、体が恐ろしい程低い温度になっていて、不味いと思い人肌で暖めてくれたという。
思わず抱きしめて感謝をして頭を撫でていた。
私はランニングしないとなと思い30分程村の外周を走ってきた。そして剣を握りしめ素振り等の鍛錬を行い、セチアが朝食が出来たからと呼びに来るまで鍛錬をしていた。
記憶が無いが、自然と毎日やっていた事のようで難なくやれた。
鍛錬をしている時に収納の中を確認をしていると一冊の仕事用の手帳が出てきて少し目を通した。
仕事のメモが終わった後、俺の身に起こった事が書かれていた。
どうやら俺は45歳でこの世界に異世界転移させられて、18才の若い体になった。召喚した奴に嵌められ追放されたりと書かれている。後でじっくり見よう。最後のページには34日目の朝の事が少し書かれていてそこで終わっている。今は転移して35日目のようだ。
質素な朝食をとり、村長に予定を聞かれた。
今日は特に予定が無いが、倒した盗賊のカードを回収したいと伝えたら、私が倒した分は既に回収しており、渡してくれた。
「ありがとうございます。実は記憶を無くしております。記憶を無くす前に書き留めていた手帳があるので多少の事は分かるのですが、その手掛かりを元に自分を知る人物を探そうと思っています。しかし今日は亡くなった方の埋葬などが有るのでしょう?あと名前がわかりました」
とギルドカードを見せた
「はい。それは難儀なことで。今日は亡くなった者の埋葬を行います。何のおもてなしも出来ず申し訳ありません」
村長はカードを見て
「驚きましたな。強いとは思いましたがS級の冒険者様でしたか」
「そう言えばセチアさんの処遇についてですがどうすれば良いのでしょうか?彼女を差し出すと言っていたようですが?」
「はい。文字通り彼女は奴隷で、村にはお支払い出来る対価を用意できません。私の方で所有している彼女しか価値のある物は有りません。どうか貰って下され。こんなちんけな村で一生を終えるには彼女は不憫です。それに初めての方がS級の冒険者様で、一緒に居る方が彼女も良い暮らしが出来ましょう。」
「そうか。しかし昨夜は俺も怪我をしていて彼女を抱いていませんよ。まだ処女のままです。本当に頂いて良いのですか?無論大事にしますよ」
「何とそれはランスロット様は希代の紳士様ですな。尚の事貰って下され。既に聞き及んでいると思いますが此度の盗賊の襲撃は彼女を巡ってです。本音を言うと他の村人から処分せよと強く訴えかけられています。ご無礼を承知で申し上げますと、出来れば早く彼女を連れて出発をして頂ければと思います。」
「そんなに状況が悪いのか?」
「はい。今はまだ死体の埋葬で忙しいのですが、それが終わると今度はセチアに意識が向きます。馬車は盗賊が乗ってきたのがあります。隣町にはどちらの街も今出れば夕刻には到着出来ると思います。馬の飼い葉も詰んであります。どうかあの子の事を宜しくお願いします。年老いた私たちにとっては娘同然としておりました。」
と事情が分かり、セチアには恐らく親とは金輪際の別れと成る旨伝えると墓にお参りに行った。何でも3年前に流行病で亡くなったんだそうだ。奴隷ではあるが未だに処女で手元に置いている理由が分かった。
彼女の荷物を受け取りセチアと一緒に隣町を目指して出発した。
実は彼女が自ら私への報酬の代わりに自分を差し出すように進言したという。彼女に質問をした
「どうしてそんな事を言ったのですか?」
「あの、その、助けて頂いて、戦っているお姿を見て感じたんです。私の生きる道はこの方にあると。それとお風呂でご主人様に触れた時体中に痺れが走った時に何かが見えたんです。一緒に旅をして娶って頂いていて私が幸せそうにしていて、魂が間違いないと感じたんでしゅ」
と私が感じた事と同じ事を彼女も見ていたようだ。あっまた舌噛んだ!大人の女性のそんな素振りが愛おしくなってしまう。
村長にお礼を言い出発する事にした。
馬車が出る時に大金貨そう、100万G相等を一枚おもむろに投げて渡し
「世話になった」
と一言のみ言い放ち出発した。
御者をセチアに任せて手帳の確認と荷物の確認を行った。
荷物に中に持ち運び式のトイレ小屋があり、途中のトイレ休憩の後彼女に抱き付かれて涙して感謝をされた。
俺は色々魔法が使えるようで手帳様々だった。一度使えば当たり前のように使えるのだ。
セチアには俺が異世界転移者、つまり勇者と伝えると肉食動物のように
「今晩私を抱いて女にして下さい。ご主人お情けを!刻印を!」
と必死に迫ってきた。よくよく話を聞くと異世界転移した勇者はおとぎ話の主人公であり実際にあった事として有名でそして憧れであるという。
俺はデコピンをして心が愛するまで待とうねと言い聞かせるが彼女の事は気に入ったし好感も持てる。今はバルバロッサに向かう必要があり数ヶ月は掛かる。下手に抱いてしまい妊娠をされては困るのだ。
少なくとも収納に避妊具は無かった。
多分避妊の手段を持っていたら即抱いている自信があった。
途中に弱い魔物が出ただけで特にイベントも無くかなり早く街に着いた。馬車にあった荷物等を収納に入れた為重量が大幅に減ったから早く来れたのだ。
街に入るには犯罪者の確認だけで、守衛で宿を教えて貰い先ずは宿に向かった。
宿に着くと馬車を預けて馬の世話と餌の用意をお願いして部屋を取った。二部屋取ろうとしたらセチアさんに怒られて一部屋にせざるを得なかった。
安宿ではないがちょっと財布に余裕の有る冒険者が使う感じの中級宿で部屋にお風呂がある。
彼女は意外とお姉さん気質で何かと世話を焼きたがる。奴隷云々だからでは無く彼女の性質だ。
部屋で少し落ち着いてからギルドに向かった。
セチアの冒険者登録と盗賊のカードを渡して換金の為だ。
20分程受付で並ぶと順番が回ってきた。受付に居たのほ銀髪ロングヘアの美人さんだ。
俺のカードを見せると震えて奥に行ってしまった。
間もなく別室に案内されてしまい、ギルドマスターと対面した。村が襲われその盗賊を討伐した分の換金と彼女の冒険者登録とをお願いし 討伐した盗賊のカードを見て絶句していた。
討伐依頼のある盗賊団でしかも特別依頼の為に達成報酬が1千万だ。
討伐した盗賊の懸賞金が3200万になった。200万を現金でそれ以外をカードに入れて貰う。
その前にセチアの登録を行った。
俺のパーティーメンバーに加えた。
俺のパーティーはブラックオニキスと言う。メンバーの枠がまだ余っているようなので登録をお願いした。
登録を済ませて宿の食堂で食事をしようとして問題が発生したのだ。せチアが床に座ろうとした為に慌てて止めたのだ。奴隷は床で座るのが当たり前という。慌てていて後で話すとして、今は目立ちたくないから一般人として行動するように話をした。
メニューを読むのが難しかった。辛うじて読める程度だ。
ホーンラビットの煮込みシチューを頼み食したが薄味だった。
部屋に戻り、お湯を張るが、お湯発生の魔動器に魔石を買いセットするか魔力を込めるかだったが、俺が手を添えるとあっさり行けた。一般人には無理で、宮廷魔術師レベルがやっと行えるとジト目で見られた。
風呂に入ると案の定セチアも入ってきたが、予めバスタオルを巻かないとダメと伝えておいたのでバスタオルを巻いていた。彼女の裸は破壊力があり、いつ理性が飛ぶか怪しかったからだ。
風呂を出た後俺は手帳をよく読んだ。ナンシーとシェリーが妻で、同郷のセリカと言う高校生と婚約している事等が分かった。
魔法やスキルにギフトの記載があり、ステータスが見れなくてもなんとかなりそうだ。
驚いたのが部位欠損を修復できると言う。試しに手帳の通りに眼を思い、
『部位欠損修復』
と言うと眼が再生された。
セチアが
「うへえええええ」
と驚いているが反応が面白く笑い転げてしまった。俺はどや顔で
「眼がなおっちゃったよ」
と言うとセチアはひれ伏し俺を崇め奉っていたのでちょっと引いた。
先ほ程から自分の言質や思いが変わってきていると感じていて自身の事を 私 から 俺にシフトしていっていると自覚したからだ。
そうこうしていると頭に
「しろ どうか 私たち いまど・・」
とノイズ混じりで何かが聞こえてきた。
そう言えば『あ』『ラン』とか女性の切迫した声が時折聞こえるがよく分からない。
ゲートが便利そうなので村の近くに出したら出たのでバルバロッサに試すもゲートがでなかった。行ったことがある場所限定らしいが、色々試してみると、以前の記憶を失った分の場所では無理と言うことが分かった。
それと俺はハーレムを築いていて2つ名がハーレム王らしい。
色々考えているとふとセチアがベットの上で膝枕をしてくれていた。
俺は既に妻がいて、20人以上のハーレムを持っていると分かったと伝えたら、驚きはしたが、ただ頷いて自分も加えて欲しいと伝えられた。色々考える事が多かった。
驚いた事に収納の中に家と言うか屋敷が入っている。俺何したんだ?
考えをまとめていると眠気に勝てず膝枕のまま眠りに落ちていった。
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