仲間割れ
「聞いて、あたし大金持ちになったのよ! ミンクのコートも持っているの! あなたにも見せてあげたいわ!」
そうメアリー・コグルが電話でロンドンの友人に自慢するのを、フォンテーンは苦々しい思いで聞いていた。
「メアリー、何度も言うようだが、そのミンクのコートは処分しろ。それを着てロンドンに戻ったりしたら、足がついてしまう。ミンクのコートが欲しいなら、別のやつを買ってやる」
「いやよ。あたし、これが気に入ったの。どうしてもこれが欲しいの」
無事に主人夫妻を始末した執事にとって、今や南アフリカ行きを阻む最大の障壁となっているものは、無能なる共犯者メアリー・コグルの存在であった。
三人はスコット=エリオット氏の亡骸を処分した後スコットランドに留まって豪遊を続けていたが、メアリーが事態の発覚を招きかねない行動を繰り返すために、フォンテーンは危機意識を強めていたのである。
「殺しましょうか」
と、キトーは簡単に言った。
「おれがあの女をレイプして、殺しますよ。それで解決でしょう」
そう言われはしたものの、一応メアリーとは六年の付き合いがあるフォンテーンはもう一回だけ説得してみることにした。メアリーは表面上、言うことを聞いたようだった。
だが、フォンテーンとキトーがロンドンのスコット=エリオット氏の屋敷のめぼしい財産を漁ってまたスコットランドに戻ってくると、やはりメアリーは例のミンクのコートを着て、近所をうろつきまわっていたことが分かった。
家の中でもメアリーの行状は改まらない。ミンクのコートを床の上に広げ、この上でセックスしようとフォンテーンを誘った。フォンテーンは拒みはしなかった。だが、この女をこれ以上生かしてはおけない、と決意を固めてもいた。
その夜、フォンテーンは最後の機会として、メアリーに暖炉の火の中でミンクのコートを焼くように命じた。メアリーは拒絶した。そこで、フォンテーンが彼女を羽交い絞めにし、キトーがその頭上に火掻き棒を振り下ろした。何度も、何度も。
二人は死体を川に捨て、ロンドンへと戻った。
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