本人が納得するまで
ヒロ坊くんの家に戻ると、お義父さんが、
「私はリビングで少し仮眠を取ります。皆さんはゆっくりしててください」
とおっしゃいましたので、私達はいつものように二階へと上がりました。
普段は夜にお仕事をなさって昼間はおやすみになられてるお義父さんにとっては、深夜まで外出していたようなものでしょう。せめて体を休めていただきたいと思います。
二階に上がると私のスマホに着信がありましたので、確認します。
私はそれを見てホッとしていました。
「は~、疲れた~」
イチコの声がして顔を上げると、イチコもカナもフミも、疲れたのかその場で横になっています。イチコは自分の家ですので当然でしょうが、カナとフミも本当にリラックスしているのが分かります。彼女達にとってもここがこそが<家>なのです。
さすがに山下さんはいつも通りに座ってらっしゃいましたが。
そしてフミが、
「でもまだ安心できないよ。あの館雀って子が来るかもしれないし」
と。それに対してはカナが、
「あ~、そうかもね」
と応えます。なので私は安心させるために告げさせていただきました。
「それは大丈夫なようです。現在、彼女は本屋で立ち読みをしているそうですし」
するとカナが、尋ねてきます。
「探偵からの報告?」
「そうです」
その私の言葉に、全員がホッとするのが分かったのです。
それからも館雀さんは結局、立ち読みした後はそのまま自宅へと帰ったとのことでした。
「ねえ、イチコ。館雀さんのこと、どうするつもりなの?」
フミが問います。
けれどイチコはやはり平然とした様子で応えます。
「え? 別にどうもしないよ。お話ししたいっていうんだったら聞いてあげるだけだよ」
そんなイチコに納得できないフミはなおも食い下がります。
「本当にそれでいいの? あんな言いたい放題言わせといて、イチコは本当に平気なの!?」
一階で休んでらっしゃるお義父さんを気遣ってか声は控え目ですが、強い想いが込められた言葉でした。それでもイチコの様子は変わりません。
「平気も何も、この家の主であるお父さんが彼女を追い出そうとしないんだから、別にそのままでいいってことだと思うよ?」
そして続けて言ったのです。
「実はお父さん、去年にピカと千早ちゃんがこの部屋で言い合いをしてた時に、『ケンカなら
「……!」
思わぬ言葉に、今度は私の方がハッとなってしまったのでした。
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