昼休憩
いよいよ綱引きのための入場が始まりました。
「さあさ、綱引き始まっちゃうよ。行こ」
イチコが声を掛けると、フミが頷きました。その姿に私だけでなくカナもホッとしてるのが伝わってきます。
よかった……
ただ、綱引きの方は、ヒロ坊くん、千早、沙奈子さんが属する白組の負けで残念な結果に終わりましたが、常に勝てるわけではありませんので、それで良かったと思います。
綱引きの次は三年生の五十メートル走があり、それで午前のプログラムは終了しました。
この小学校は、校庭が狭いこともあり、家族で一緒に食事をすることはありません。生徒は教室に戻ってお弁当を、保護者はそれぞれ自宅に戻るなりして昼食をとることになります。
「それではまた後ほど」
ヒロ坊くんと千早にそう声を掛けて、教室に戻るのを見送ります。
「じゃ、お昼が終わったらまたね」
山下さんも沙奈子さんに声を掛けていらっしゃいました。そんな山下さんにお義父さんが、
「どうですか? うちで一緒にお昼にしませんか?」
と提案します。
「え、いや、でも…」
突然の提案に山下さんは遠慮なさっていました。なので私も、
「私たちも山仁さんのところでお昼にします。用意はすでにできていますので、いかがですか?」
そう誘わせていただきました。朝から千早とヒロ坊くんが、自身のお弁当を作るついでに私達の分も作っていてくれたのです。その際に、イチコとカナも一緒に手伝って、ハンバーグを作りました。
イチコは元々、ハンバーグは作れましたが、カナも最近になって作れるようになったのです。ヒロ坊くんと千早の手ほどきを受けて。
女性だから料理くらいつくれなければということではなく、あくまで、将来、一人暮らしをするようになった時のために一品くらい作れるようになっておいても損はないと考えてのことでした。
一方、山下さんは、そのような形で誘われることを苦手としてらっしゃる方だというのは私も知っています。なのであまりしつこくはしないつもりだったのです。けれど、
「分かりました。ごちそうになります」
と応えていただけたことに、思わず顔がほころびました。山下さんにとって私達がそれだけ気を許せる相手だというのが実感できたからです。
私達のこの繋がりは、家族に準じたものであると私は考えます。ですから、気軽で安心できるものでありたいのです。
「じゃあ、取り敢えず家に帰りますか」
イチコが声を上げ、
「あいよ」
「うん」
「はい」
カナとフミと私が応え、私達は学校を後にしたのでした。
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