被害者や遺族の気持ちを

今後、日本において<復讐>が合法化することはないと、私は睨んでいます。


しかしこれを言うと、


『被害者や遺族の気持ちを考えろ!!』


とおっしゃる方が必ず出てきます。


が、私は、『被害者や遺族の気持ちを考える』からこそ、復讐の合法化には賛成できないのです。


もし、誰かの復讐にヒロ坊くんが巻き込まれでもしたら、私は巻き込んだ方を絶対に赦しません。苛烈な報復を望みます。たとえそれが、玲那さんのような被害を受けてきて、その復讐をしようとした方であってもです。


<他人の復讐に巻き込まれた被害者やその家族の気持ち>を考えるからこそ、復讐の合法化には賛成できない。


人間はミスをする生き物です。現実に起こっている数々の冤罪事件などを見るだけでも、それは明白です。


そう言うと、


『じゃあ犯人が間違いなくはっきりしてるものだけでも認めればいいだろ!』


とおっしゃる方がいらっしゃいますが、そうなると今度は、加害者が特定できない、復讐すべき相手が特定できない被害者や遺族の気持ちはどうなるのですか? その気持ちは考えないのですか?


『限りなく怪しい相手がいても間違いなく加害者であると断定できない以上は復讐できない』


となれば、その無念はいかばかりでしょう。私自身もその立場になったと想像すれば、


『証拠なんかどうでもいい! こいつが怪しいんだからこいつに復讐してやる!!』


などと考えてしまうのは間違いありません。しかし、それが冤罪だったとしたら……?


冤罪で復讐された方はどうすればいいのですか?


もしご自身やご自身の家族、大切な人がその冤罪で復讐の標的にされたとしたらどうなさるのですか?


また、報復を法律で実質的に認めている国もあるとは言いますが、そこで運用上どのような問題が起こっているかを調べれば、安易に賛成などできないと思うのです。


報復を認めている国であっても、実はそこにはいくつもの抜け穴があるのです。力を持つ者は力を持たない者からの報復を免れるための抜け穴が用意されていたりもします。


それが現実なのです。


私は、それらについて考察するために、過去の凶悪事件などもこれまで調べてきました。


その中に、<七人殺しの役童>と呼ばれた元死刑囚の資料がありました。


幼い子供を含めた七人を次々と殺害し、駆けつけた警官隊とも大立ち回りを繰り広げて十三名の重軽傷者を出した上、自身の裁判の際にも、


『俺を殺してみろ!! 今殺しておかなきゃここにいる全員とその家族も皆殺しにしてやる!!』


と叫んだという、<七人殺しの役童>こと、役童強馬えきどうきょうま


凶悪犯は数いれど、私はなぜかその役童強馬が特に印象に残っていたのでした。


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