ラブレター事件 その14
「それで、どう責任とってくれるんですか?」
ですが、お義父さんもイチコも動じません。
「昨日も言ったけど、その責任っていうのがよく分からないんだよね。館雀さんはどうしてほしいのかな?」
イチコは落ち着いて訊き返します。そしてお義父さんはイチコに任せることにしたのか、腕を組み、いつもの黙って見守る姿勢に入りました。
その中で、館雀さんだけが吠えます。
「はっ、そんなことも分からないんですか? 責任と言ったら責任ですよ。それとも、どんな漢字を書くのか教えてほしいとでも?」
大人が増えたからか少しだけ言葉遣いは丁寧になりましたが、本質は何も変わっていません。
「あなた、おもしろいね」
「バカにしてるんですか!? 人の手紙を勝手に読んだ上にそれですか!?」
そして突然、お義父さんに矛先を向けます。
「あなたがちゃんと躾けないからこんなのになったんですよ!? ホント、近頃の親は子供を躾けないんですね!!」
ですがお義父さんは困ったように微笑むだけでした。なので、
「そうだね。お父さんは私のすることについてはあんまり口出ししたことないね。でも私は、目上の人にそんな風に食って掛かることはしないなあ」
と、代わりにイチコが応えます。
「館雀さん。取り敢えずまずはどうすればあなたが納得できるのか、それについて話そうよ」
「だから何度も言ってるでしょ!? どう責任を取るのかって!?」
「ごめん。私は館雀さんじゃないから、あなたの思う責任っていうのがピンとこないんだ」
「何で分からないんですか!? 何が分からないのか分からない!!」
「そうだね。あなたが分からないのと同じで私も分からない。だからこうやって話をすることで、お互いに何が分からなくてどうやったらそれが分かるのかを確かめようとするんだと思うんだけどなあ」
「何その屁理屈!? そうやってはぐらかそうとしてるのが見え見えよ!!」
「え? さっきは分からないって…」
「ほ~ら、今度はそうやって揚げ足を取ってくる! その手には乗らないからね!!」
「あはは、話が進まないね。でもいいよ。そうやって話してくれるだけでいい」
「余裕ぶってるけど、内心じゃ焦ってるってのがバレバレ! カッコ悪!」
「私は元々カッコ良くないからな~」
「だからとぼけないでどう責任取るのか言ってください~!?」
「うん。だからどうするのが責任取ることになるのか説明してほしいな~って言ってるんだよね」
「逃げんなよ! 誤魔化すなよ!!」
「誤魔化そうにも何をどう誤魔化したらいいのか…」
「しつこい! とにかく責任取れよ!!」
「そうだね。責任取るためには何が責任取ることになるのかはっきりさせなきゃね」
「ふざけんな!!」
最後にそう吐き捨てて、館雀さんはどかどかと足を踏み鳴らしながら階段を降り、ビシャン!と大きな音を立ててドアを閉めて出ていってしまったのでした。
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