お祝い
千早がヒロ坊くんに手伝ってもらいつつケーキを作り始めて約二時間、
「よっしゃ! 会心の出来~♡」
と声を上げました。
「おお~!」
イチコとカナとフミが感心します。
そこで私は、山下さんに電話をかけました。
「お休みのところすいません。まだ御在宅でしょうか?」
いつもであればまだ家にいらっしゃる時間でしたが、念の為に確認します。すると、
「はい、今はまだ家にいます」
とのお返事。ですので、
「実は、千早が玲那さんと絵里奈さんのためにケーキを作ったんです。それで今からお届けに上がろうかと思うんですが、よろしいでしょうか?」
「……!」
一瞬、電話の向こうで戸惑うのが伝わってきました。でも、
「千早ちゃんがケーキを作ってくれたんだって。それで今から持ってきてくれるって」
と、おそらくいつものようにビデオ通話で団欒中だったのでしょう、絵里奈さんと玲那さんに問い掛ける声が聞こえてきました。そして、
「私も食べたいです」
という絵里奈さんの声が、
『私も』とおっしゃってましたので、きっと玲那さんも『食べたい』とメッセージを送ってくださってたのでしょうね。
そうと決まれば早速、千早とヒロ坊くんと一緒に山下さんの家に向かいます。
いつものように玄関のチャイムを押すと、鍵が開けられ、山下さんと沙奈子さんが私達を出迎えてくれました。
「おっは~♡」
千早が笑顔で挨拶します。正直、あまり褒められたものでないとは感じつつも、私は敢えて何も言いませんでした。彼女がそうするのは、私達の間だけだからです。必要とあらば丁寧な挨拶もできるので、大丈夫でしょう。
何より、山下さんと沙奈子さんが笑顔で迎え入れてくれたのですから。
「おはよ」
ヒロ坊くんも気楽な感じで挨拶します。でも私だけは、
「おはようございます」
と丁寧に挨拶させていただきましたが。
それから部屋に上がらせていただき、
「絵里奈さん、玲那さん、お誕生日おめでとうございます」
と、ビデオ通話の画面の向こうにいたお二人にお祝いの言葉を送らせていただきました。
実際の誕生日は月曜日ですので、その時にまた改めてお祝いさせていただくことになりますでしょうが。
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます」
千早とヒロ坊くんも続けてお祝いの言葉を送ります。その姿勢がちゃんとしているので、先ほどの軽い挨拶のことをとやかく言う必要がないと感じるのです。
「ありがとうございます」
絵里奈さんと玲那さんが、そろって頭を下げてくださいました。そんなお二人に向かって、
「玲那お姉ちゃん、絵里奈さん、これ、私が作ったケーキ。上手にできてたらいいんだけど」
千早が少し気恥ずかしそうにケーキを入れた箱を掲げたのでした。
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