一緒にいられれば

結果としては、カナもフミも気に入っていただけたようです。


と言いますか、私達の場合は、一緒にいられれば基本的にそんなに細かいところは気にならないということですが。


ただそれでも、


『ここは譲れない』


という部分において大きな乖離がないから折り合いがつけられるというのは確かにあります。


今回については、


<美味しい料理>


と、


<清潔なお風呂>


そして、


<しつこく要件を訊きに来る過剰な接客がない>


といった点で合致しているので、他の細かい部分については容認できるといった感じでしょうか。


細かい相違点を上げるならば、カナと千早は本当は魚よりも肉料理が好きだとか、フミは本当は洋間の方がいいとか、そういう違いはあります。しかし大きな問題とはなりません。


一緒の時間を過ごせるという事実の前では。


ともあれ、これでカナとフミも気に入ってくださったのが確認できました。これならばイチコとヒロ坊くんも気に入ってくださるのはほぼ間違いないでしょう。


ただ、他にお客がいないからといって千早とカナが浴槽でお湯を掛け合って大はしゃぎしていたのはちょっとはしたなかったですね。


けれど、それについては、フミが、


「こらーっ! 二人ともはしゃぎすぎ! 他にお客さんいたらどうすんの!?」


と諫めてくれましたが。


そうです。私達は、お互いに『それはマズいのでは?』と思った時には諫め合うということができるのです。


その場の<ノリ>を優先して、


『せっかくの空気を乱すな』


的なことは言いません。お互いに言われたことについて冷静に考えることができるのですから。


こういう意味からも、画一的な感性や価値観を持っただけの集まりでないことが分かります。<ノリ>や<空気>ばかりを優先して、『何かおかしい』と感じてもそれを口にすることさえできない集団ではないのです。


そしてそれは、お互いを信頼できているからこそのものなのでしょう。


『これを言ったらこの関係が壊れてしまう』


という心配がほとんどないのです。かつ、誰か一人が一方的に我慢しているわけじゃない。自分を抑えているわけじゃない。互いに気遣いながら、そして受け止め合いながら。


だからこそ家族同然の付き合いができる。


赤の他人だった者同士が結婚によって家族になるように。


それを改めて感じながら、私達は寛いだ一時を過ごすことができました。


同時に思います。ヒロ坊くんたちはお義母さんと家族水入らずで過ごせているのかと。


心穏やかな一時を過ごせていることを願わずにはいられないのです。


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