目覚ましい成果
パーティが終わると、フミとカナと千早は上気したとても楽しそうな顔で笑い合っていました。
それぞれ発散できたようで私もホッと安堵します。それに今回は、ヒロ坊くんとすごく近くにいられたことで私自身もすごく充実した時間を過ごせましたし。
玲那さんはせっかくの機会だからということで、また御友人らとオフ会をこのままここのカラオケボックスで行うそうです。
やはり彼女もいろいろと発散する機会が必要なんでしょうね。
山下さんと沙奈子さんと絵里奈さんについては、ご自宅でゆっくりされるそうですし、そちらはそちらでお任せするとして、私達はヒロ坊くんの家に帰り、千早の手作りケーキをいただきます。
「は~、美味しい♡」
千早のケーキを一口食べたフミが、頬を押さえて幸せそうに言います。実際に千早のケーキは美味しいのです。この事実がフミをさらに癒します。
そしてフミに喜んでもらえたことで、千早もまた、癒されるのです。自身の家庭では得られない安らぎを得るのです。
以前に比べれば、暴力を振るわれることも減り、かつ家事全般をこなすようになったことでむしろ依存されるようになった千早は、既に
完全に立場が逆転していますね。
正直申し上げて歪な関係であることは事実です。これは決して本来の家族の姿ではないでしょう。ですが、元々の関係が異常であったのですから、正常化するには並大抵のことではないでしょう。時間もかかります。
それが僅か一年ほどで、暴力について改善することができたのですから、むしろ目覚ましい成果だと思うのです。
そのことを思えば今の関係も意味があるのではないでしょうか。
これがそのままずっと続くのか、それともまた変化していくのか、私には分かりません。ですが今の千早の笑顔は本物だと感じるのですから、否定しなければいけない理由を私は持ち合わせていません。
「じゃ、いってくるね」
「いってきます」
フミがケーキを喜んでくれるのを見届けて、千早と私は旅館へと向かうために家を出ます。
「いってらっしゃい」
「ゆっくりしてきてね」
ヒロ坊くん、イチコ、カナ、フミに見送られ、迎えのタクシーへと乗り込みました。次からはバスでということになりますが、今日のところはタクシーで行きます。
「どんなところかな~♡」
「落ち着けるところであればいいですね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます