人間が滅びるっていうこと…?
「人間が滅びるっていうこと…?」
私が山下さんに話していたのを聞いていた千早が、不安そうな表情で尋ねてきました。
いえ、<不安>というよりは<悲しそう>と言った方がいいでしょうか。
「私はイヤだよ。みんながこうやって楽しくいられなくなるのとか、イヤだ。
ねえ、お姉ちゃん。どうしたらみんな幸せでいられるの…?」
それは、彼女の素直な気持ちだったのかもしれません。私の話を受けて感じたものをそのまま言葉にしたのでしょう。
ですがそれ故に、真に迫っていたとも感じました。
そんな千早の<気持ち>を受け止め、私は真っ直ぐに彼女を見詰め、応えたのです。
「その答えは、私には出せません。私はまだその答えを得られるほどの能力はありません。
ただ、これだけははっきり言えます。そうならないようにする為に努力している人は確かにいるということです。
千早。私はあなたと出会ってたくさんのことを教わりました。そしてこれからもたくさんのことを教わりたいと思っています。その為に必要なことを私は続けます。
私は今、とても幸せです。その幸せをみすみす手放すほど物分かりの良い人間でも諦めの早い人間でもありません。そしてこの世の中には、そういう、諦めの悪い人間がたくさんいます。そんな人間がいる限り、簡単には滅びませんよ」
私の言葉を、千早も、真っ直ぐに見詰めて聞いてくださいました。だから私も続けます。
「ですがそれは、千早自身の協力も不可欠ですからね。人任せにしているだけではただの甘えというものです」
と。
しかしそれには、
「え~と…」
と戸惑った様子にもなりましたが。
そこで、
「大丈夫。こうやってどんぐりを戻したり、エネルギーの無駄遣いをしないように気を付けるだけでも協力してることになりますよ」
とも付け足させていただきます。
すると千早は、上目づかいに私を見て、
「じゃあ、今からゲームするのとかって、ダメ…? 電気のムダづかいになる…?」
とも訊いてきました。
それに対しては、
「大丈夫ですよ。そのくらいならこの発電パネルだけで十分に賄えてますから」
そう応えさせていただいたのです。
今の便利な生活を捨てることは、おそらくできないでしょう。ですが、無駄に贅沢することをほんの少しだけ抑えるという程度なら、可能なのではないでしょうか。それと同時に、技術を磨き効率化を図ることによって、実質的に環境への負荷を減らすということも進めていくべきだと私は考えています。
この館の太陽光パネルも、その研究の為のものなのです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます