循環

「よっしゃ~! こんなもんかな。ホントはもっと大きくしたかったけど、これ以上大きくしたら学校に持っていけなくなりそうだからね~」


お昼が終わりリビングに戻り、千早はまたあの<ドングリのオブジェ>を大きくしていました。しかしさすがに普段使っているトートバッグにも入りそうにないサイズになったことで、ようやく納得したようでした。


そしてそれは、ヒロ坊くんも同じでした。<ドングリのロボット>は全高三十センチを大きく超えるサイズになっていたのです。最初に作っていたロボットはそのボディの中に埋もれ、<核>となっているようです。


「補強補強!」


千早が声を上げながら接着剤をつけていきます。そうしないと、おそらく、持ち上げただけで崩壊するでしょうね。


やがてそれも終わり、満足気に千早達は後片付けを始めました。


「千早。どんぐりは動物達の餌にもなります。使わなかった分はまた戻しておいてください。動物達の餌を取り尽くしてしまってはいけませんからね」


私がそう言うと、彼女は、


「お~っ! なるほど!!」


と応え、納得してくれました。そんな彼女の姿に、私はまた、胸があたたかくなるものを感じます。


殺伐として、攻撃的で、他人を嘲笑うことを当然だと思っていた彼女はもういません。


それが嬉しい。


皆で残ったドングリを手に庭に出て、それを撒きます。


「こうしておけば、動物の餌になったり、芽が出て新しい木として育っていきます。自然はそうして維持されているんです。忘れないでくださいね」


私の言葉に、千早だけでなく、ヒロ坊くんも沙奈子さんも大きく頷いてくれました。


ああ……尊い……


つい酔いしれてしまいそうになるのを感じていると、ふと、山下さんが何かを見上げている様子が目に留まりました。


その視線の先には、館の屋根が。


ピンと来た私は、


「この館の屋根は、父が役員を勤める家電メーカーの商品である太陽光発電パネルを使って作られています。自社製品の性能テストも兼ねているそうです」


と説明させていただきました。すると山下さんも、


『ああ…!』


と納得された表情になります。そこで私は続けさせていただきました。


「こちらは、今年に入ってから新しく設置されたもので、最新式のものですね。従来型の、いかにも後付けというそれでなく、極力、建物のデザインに沿った外観を持ちつつ性能の向上を図ることが、現在のテーマだそうです。その為、発電パネルそのものが屋根材も兼ねています」



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