どこ吹く風
昨日から降り出した雨は、今日の朝になってもやむ気配がありませんでした。
一時は小康状態にもなっていましたが、風と合わせてまた段々と強くなっているようです。
台風の本体が近付いているということなのでしょう。
なのでタクシーにはそのまま千早の家まで行ってもらって、そこで千早を乗せてヒロ坊くんの家の近くまで来ました。
本当なら自宅で待機しているのが一番なのでしょうが、千早にとってはむしろ自宅にいる方が不安なのでしょうね。私の顔を見ると明らかにホッとした表情になりました。
この台風の中、小学生の子供を連れだしても、千早のお姉さん達は何も言いません。むしろ気を遣わないといけないのがいなくなってくれて清々すると言わんばかりに、挨拶はおろか視線さえ向けません。
もしこのお二人が将来、子供を持ったとしたらその子にどう接するのかと思うと、陰鬱な気分にさえなります。
しかし今はまだそれを案じても仕方ないでしょうね。
実際にその時になってみなければ何も分からないのですから。
とにかく今は、千早と一緒にヒロ坊くんの家に向かうのが大事です。
もっとも、さすがにタクシーで行ったので、何事もなく着けました。
しかも、いつもは少し離れたところまでしか使わないのですが、今日はヒロ坊くんの家の前まで行ってもらいました。
この辺りは道が非常に狭く入り組んでいて、あまり自動車が通ると地元の方々に迷惑になるかと思い、ここよりはまだ道が広く辛うじて自動車がすれ違えるところまででお願いしていたものの、さすがに今日は安全を優先させていただきました。
こうして無事にヒロ坊くんの家に辿り着くと、
「いらっしゃ~い♡」
「おはよう…」
台風などどこ吹く風という感じで明るく迎えてくれたヒロ坊くんと、穏やかな表情の沙奈子さんの姿に、千早も明るく笑顔になります。
ちなみに沙奈子さんは、山下さんが仕事に行く前に連れていらっしゃいますので、平日の今日は当然、朝からヒロ坊くんの家にいるのでした。
山下さんとしても、アパートの一室に沙奈子さんを一人だけで置くのは不安でしょうし、賢明な判断だと思います。
また、ヒロ坊くんと沙奈子さんが揃って傍にいらっしゃるというのは、千早にとっても心強いものでしょうね。
「今日は動画三昧だね」
千早を迎え入れたヒロ坊くんが言いました。
万が一などを想定し対処するのは、大人の役目です。子供である三人には、ただ安心していただけるのが私の望みでもあります。
その上で、楽しく勉強などができればそれでいいのだと私は思います。
だから今日も、ヒロ坊くんと千早と沙奈子さんが楽しんでる様子を見るのが私にとっても励みになるのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます