整然と
「それじゃ、行きましょうか」
ヒロ坊くん、千早、沙奈子さん、山下さん、イチコ、カナ、フミ、そして私の全員が揃ったことで、そう声を掛けさせていただきます。
なお、ヒロ坊くんのお父さんは、現在就寝中の為、同行はしません。いつも夜間に仕事をしてらっしゃって、昼間はずっと寝てらっしゃるのです。
こうして出掛けるのは。ヒロ坊くんのお父さん、(私はもう既に内心では『お義父さん』と呼んでいますが)にゆっくり休んでいただきたいというのもありました。
カーテン一枚で隔てられた隣室で私とイチコとカナとフミの四人が勉強などをしていても気にならないとはおっしゃっていただけていますが、やはりたまには静かにと思いますので。
そして、集団登校のように皆で並んで駅へと向かいます。
先頭は私とイチコ、それにヒロ坊くんと千早が続き、その後ろに沙奈子さん、カナ、フミ、そして最後尾から全体を見渡す形で山下さんについてきてもらいました。
普段の集団登校から割と整然と並んで歩くのが身に付いているらしく、ヒロ坊くんは元よりやや活発でともすれば『落ち着きがない』と言われがちな千早さえ、大きく列を乱さずに二列に並んで道の端を歩いてくれます。
『最近の子供は行儀が悪い、躾がなってない』
なんて話をよく耳にしますが、少なくともヒロ坊くんや千早、沙奈子さん、そして運動会の時などに見た小学校の生徒さん達の様子からも、正直、そんな実感はありません。
確かに子供らしくはしゃいでしまって時に周囲が見えてない行動をするお子さんはいらっしゃいましたが、その程度は活発なお子さんなら普通のことじゃないでしょうか。
むしろ、私の印象としては、
『意外なほどに行儀のいいお子さんが殆どですね』
というのが実感でした。
『最近の子供は行儀が悪い、躾がなってない』
とおっしゃる方は、一体、どういうところを見ていらっしゃるのでしょう? たまたま自身が見かけた一部のお子さんの振る舞いを見ただけですべての子供がそうであるかのようにおっしゃってるだけとしか思えません。
もっとも、かつての私も物事の一部だけを見て結論を出すということをしていましたので、それを強く非難はできないのですが……
などということを延々と考えられてしまうほどに、特に問題もなく駅に着き、駅前から出ている水族館の近くのバス停に停まるバスに乗り、そこでも楽し気に話はするもののあまり羽目を外しすぎることもなく、無事に水族館へと辿り着いたのでした。
でもさすがに、千早は水族館が見えた途端に、
「うお~っ! キタ――――――!!」
とテンション高く叫んでしまいましたが。
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