モンスターペアレント? その2

『モンスターペアレントみたいじゃない?』


イチコにそう言われた私は、カアッと頭に血が上るのを感じていました。だからつい、


「納得いきません! これはれっきとしたイジメ事案として扱うべき案件じゃないでしょうか? それに対して強い態度で臨むことをモンスターペアレントなどと、そんなことだからイジメ自殺は無くならないんじゃないですか?」


と、食い下がってしまいます。


いえ、今回ばかりは引き下がれません。そのような弱腰でイジメに対応できるわけがありません! なのにイチコから返ってきた言葉は、


「ああ、それなら大丈夫。昨日、ヒロ坊の担任の先生が来て詳しい状況を説明してくれたから。石生蔵いそくらさんっていう女の子、どうもヒロ坊のことが好きみたいなんだよね。だからお世話焼きたかったらしいんだけど、ちょっとそれが行き過ぎちゃったみたいで、ヒロ坊からしたら意地悪されてるみたいに感じられただけらしいよ」


…はい……?


「月曜日の放課後にその女の子から担任の先生が直接訊き出してくれたみたい。他のクラスメイトの子の証言からしても間違いないみたいだよ。それでその女の子、ヒロ坊に嫌われたと思って泣いちゃったんだって。でも今度から気を付けるって約束してくれて、ヒロ坊もその子に謝ってもらって許したって。だから今は経過観察中って感じ?」


「…まさか…そんなこと……」


信じられませんでした。信じたくありませんでした。まさか私以外にも彼にそういうことをしようとする女性が…? 


ああでも、彼の魅力を考えれば当然想定される事態だったかもしれません。フミやカナが身を引いてくれたことで私はすっかり油断していたのだと思います。


茫然とする私に、さらにイチコは言いました。


「でもそれって、以前、ピカがヒロ坊に嫌われそうになったのと同じだよね。たぶん」


「―――――っ!?」


その瞬間、私は雷に撃たれたかのような衝撃を感じました。私はまたやってしまったのだと思いました。壮大なブーメランが自らに返ってきたのです。


そして気付いてしまいました。私がやってることは、事情を知らない他人からはその女子生徒の行為と同じように見えるかもしれないということに。


何ということでしょう……


もちろん、私の憤りが単なる思い込みであったことに気付いた時点で報い云々の話はその前提を失い消滅しました。しかし、それとは別の新たな問題が持ち上がったことに私は平静ではいられませんでした。いえむしろ、より深刻な事態と言えるかもしれません。


そうつまり、よりダイレクトに私の目的を阻む存在が出現したのかもしれないということなのですから。


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