セレブガール・ミーツ・ボーイ その12
『勉強を教えるというのが、こんなにも難しいことだったなんて……』
思いがけない困難さに、私は戸惑っていました。
なまじ自分では分かっているから、自分にとっては当たり前のことでもそれ以上に噛み砕いた説明をしなければ分からない人には伝わらないということが最初は理解できなくて、
『どうしてこのくらいのことが分からないのですか…!?』
とつい感情的になってしまいそうになりました。
でもそれを口にしてしまってはよくある駄目な教育ママになってしまって、逆に勉強に対する意欲を失わせることを私は知っています。
私の両親もそれをよく分かっている人でしたから、家庭教師はつけられていましたがあくまで強要はしませんでしたし、させませんでした。
「そこは昨日も教えたでしょう!?」
などと発言した家庭教師については、
「あなたはもう来ていただかなくて結構です」
と、即日解雇してましたし。
おかげで私は、勉強というものに対して苦手意識を持った覚えはありません。分からないことは分かるまで丁寧に教えてもらいましたから。
「なのに……」
なのに、いざ自分が教える側になると、自分がどのようにしてもらったのか、特に小学生の頃にどのようにしてもらったのかまでは思い出せないのでした。
『一体、どのように教えてもらったのでしたっけ……?』
私にとっては当たり前のこと過ぎて印象に残らなかったようです。
たとえ思い出せたとしても、私が分からなかったところと彼が分からないところが違うと、思ったようにはまりません。
『まさか、人に教えるという行為がこれほどまで難しいことだったとは……』
かつて家庭教師をつけてもらっていた頃に、私が質問したことに答えられない人がいたりすると、
『この程度の質問にも答えられないような人が、私に何を教えてくださるとおっしゃるのですか?』
などと、内心見下していたりしたのですが、そのような人でも少なくとも<教える>という行為に関して言えば私より優れていたのかもしれないと、当時の自分の慢心が恥ずかしく思えてきたりもしました。
『本当に、かつての私はどこまで思い上がっていたのでしょう……もし昔の私に会えたなら、叱ってやりたい気分です……』
しかし、このような有様で私は本当に九年後までに彼を一流の男性に育て上げることができるのでしょうか?
正直言って不安は尽きません。尽きませんが、
『何としてもやり遂げなければいけない……それこそが、私と彼が結ばれる方法なのですから……』
と、改めて心に誓うのでした。
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