第07-3話【ポーション(3)】
「えっ! 一日でこの量をつくったんですか?」
ギルド・グランベイ支部の受付に、前日に作成したポーションを百本ほど持って行くと、ウサギ獣人の受付嬢の声がフロアに響く。
昨晩遅くまで絵を描いていたらしいリオンが大声にビクッとして、またまぶたをとじる。
「品質は並みですけど、安定していますね。全部同じSP回復ポーションですか?」
「いえ、SP回復が五十、MP回復が四十、治癒が十です。品質は全部並みです」
しばらく箱の中を確認していた受付嬢だったけど、ため息をついてカウンターの向こうで依頼完了の手続きを始めた。
「はぁ……ザートさんは領都本部からの報告書以上に規格外ですね」
ん? 俺の報告書? 本部からってことはリザさんが作ったのかな。
もしかして鉱山と古城の件はもうギルド内では共有されてるんだろうか。
「あの、ポーションを作ったのはザートじゃなくて私なんですけど?」
クローリスが割り込んで自己主張を始めたけれど、それに対して受付嬢はうろんな目を向ける。
「クローリス、貴女が生産職を自称していたのは知ってるけど、さすがにこの量を一人で作るには一日じゃ足りないわ」
「でもつくったんですよ、信じてくださいよぅ」
すがりつくクローリスが元同僚にあきれられている。
自称生産職って、クローリスは信用なかったんだなぁ。
「嘘じゃないですよ。クローリスのスキルで作れるポーションは並みですけど、手際は良かったです。僕とリオンがしたことといえば、瓶を並べてフタをしたくらいですよ」
僕とクローリスを交互に見比べる受付嬢だったけれど、本当らしいと判断したのか深いため息をついた。
「はぁ、また追い出されて、今度こそ受付嬢の研修を受けるだろうとみんなで話してたのに」
どうやらクローリスは僕らが来なければあのまま正式に受付嬢にされる所だったらしい。
「えへへ、わかればいいんですよ」
自分がようやく認められたことにご満悦のクローリスの横で書類を交わして報酬を受け取る。
「それじゃ、残りの依頼も期待して良いのかしら?」
残りというと、ポーション系はまとめて終えたから、スクロール作成と魔道具修理、それから彫金だったか。
「ええ、期待してください。なんなら明日にもまた来ますよ」
昨日の集中した様子で、クローリスの真面目さは分かった。
ここは断言してクローリスの株を上げておいてあげよう。
「ちょ、ハードルあげないでくださいよ!?」
クローリスが驚いているけど、大丈夫、君はやれる子だ。
――◆ 後書き ◆――
※第八話は長いため二分割しました。
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