第9ニャ【初恋は儚くニャ】


 ぬ子の言葉を二つ返事で返した人間。この余裕面がムカつく……だけど、ここで引く訳にはいかニャい、何故にゃぜなら、


「お、お前っ、ぬ、ぬ子の初尻尾ファーストテイルを奪っておきニャがらっ、せ、責任を取らニャいってのかニャ!」

「む? 何の責任だ? まぁ、痛かったなら謝る。すまん! これでいいか?」

「ぬ、ぬ子のバージンが……ぬ子の初恋がぁ〜」

『え? お主、今ので恋してたの? チョロい奴じゃな〜』


 猫神様がにゃにか言ってるけど、もうにゃにも聞こえニャいもん。押し倒されて、その上、初尻尾ファーストテイルまで奪われたんだからニャ? 雄猫町の男達にも、ましてやお父ちゃんにも触らせた事ニャいのに……



 その後、とてつもニャい気まずさのにゃか、三人でコタツを囲みミカンを食べ、状況の整理をしたニャ


 まず、猫神様とぬ子が人間を召喚したこと

 それは第二回十二支レースのパートニャーとして同行させる為ってこと

 召喚された者は契約に縛られていて、条件を満たすまで元の世界に帰れニャいこと

 コタツにはミカンということ——

 ——猫には小判ということ


 ひとまず、こんニャ感じで話したニャ

 初手でフラれたぬ子ははにゃしを聞きニャがらミカンを食べてプイッと膨れてやるニャ

 そんニャぬ子の気持ちも知らず、美味そうにミカンを食べる人間の顔を時折睨みニャがら威嚇してやるんだもん、このえっちニャ雄め


「あまり睨むな。猫と一緒にコタツを囲むだけでも精一杯なのだ我は

 だがしかし、契約とやらで縛られているのなら条件を満たす他帰る手段はないようだな。なら、その十二支レース、出るしかあるまい」

『お主の適応力は常人を逸しておるな……聞いた事あるぞ、お主、厨二病とかいう人間の亜種じゃろ』

「ふっ、猫神よ。それは褒め言葉として受け止めよう。で、そこの仔猫よ!」

「仔猫じゃニャい! ぬ子ニャ!」


「そうか、ぬ子だな。自己紹介がまだだったな。

 我の名は、雨宮あめみやすばり、日本の健全な男子高校生で属性は闇の厨二病インテリ眼鏡だ」


 そう言って前髪をかき上げるような仕草を見せ、眼鏡とかいう変な魔道具から覗く鋭い眼で緩やかな山を描いたニャ

 コイツ、笑うと可愛いニャ……っ、はっ!? ぬ子はにゃにを考えてっ!?

 み、認めニャい! こんなえっちな奴、嫌い!


「あめみやす、ばり……」

「切る場所が斬新だな。そうだな、面倒なら、すばりでいいぞ」

「すばり……」

「ん、何だ?」

にゃんでもニャいし。すばり、ぬ子の脚を引っ張るニャよ?」

「くっくっく……ぬ子よ。我を甘く見てもらっては困る。何故なら、我の手にはこのスマホがある。十二支レースだか何だか知らんが、これでナビればどの種族よりも早くゴール出来るだろう!」


 おぉ! そ、それは、すまぅとぽん!!


『すばりよ、でもここじゃお主のすまぅとぽんは圏外じゃろ』

「圏外っ、だとぉっ!? ……まさか、スマホが我の環境適応力について来れなかったと言うのか!?」

『これが俗に言う、残念イケメンって奴じゃな』


 すばりは眼鏡をくいっと指で押し上げニャがら、俯いたと思うと、次は肩を震わせて啜り笑い始めたニャ。ぬ子が首を傾げると、


「ふはははっ、ふふ、ふはははははっ! 面白い……そうでなくてはなぁ!」


 だ、大丈夫かニャ

 ぬ子、コイツと上手くやれるのかニャ?

 ぬ子が心配で顔を歪めたのを見たすばりは、手に取ったミカンの皮を器用に剥いてくニャ

 すばりの肉球さばきも凄いニャ。と、そんニャ思考を巡らせニャがら見つめていると、すばりは剥いたミカンをぬ子に半分くれたニャ


「え、いいのかニャ?」

「あぁ、十二支レース、出るからには必ず勝とう。これは我からの餞別だ、受け取ってくれ」


『いやそれ儂のミカン』


 ぬ子はすばりのミカンを受け取ったニャ

 その時、少しだけ指先が触れたニャ。すばりは額に汗を浮かべて、また不器用な笑みを浮かべた

 そう、お婆ちゃん言ってたニャ。食べ物をくれる奴に悪い奴はいニャいと


「すばりは、いい奴ニャ!!」

『お主チョロイン過ぎな』


 こうして契約を結んだぬ子とすばり。


 レース当日まで、あと、一ヶ月ニャ! ぱくぱく、ミカン美味しいニャ

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