9.秘めたる想い 二
「私ね、須藤に告られたの」
おかしくなった空気を入れ替えるため場所を変え購買に来ていた。時間が時間なので閉まっているが、自販機はこの時間もやっている。ベンチに並んで座り、窓からぼうっと空を眺めた。
「んー、沁みる~」
小湊さんはオレンジジュースにご満悦の様子を見せた。
「にしても、こんな目立つ場所で話して大丈夫か?」
喉カラカラだという小湊さんの要望でここまできたが、ここは普通に人目に付く場所だ。
「大丈夫よこれくらい。逆にそんな話してるなんて思われないし。ってかもう放課後で誰も通らないじゃん」
「小湊さんが良いならいいんだけど」
「それはいいんだけど……ただ今回は、ちゃんと話を聞いてもらうわ。またヘンな誤解されたら困っちゃうし」
そんな目で見られてもこっちにだって言い分が……。いや、せっかくのチャンスを与えられたんだ、これ以上なにも言うまい。
「それでその時のことなんだけど。昼休みになってすぐ、ちょっと見てもらいたいのがあるんだけど、って言われてついてったの」
須藤、お前そんな風に誘ったのか。
「それで歩いてるときにどこ行くのって聞いたんだけど、ついたらわかる、とか言うしさ。それで階段上ってくでしょ、もう着く前にピンときちゃったの」
「えっと。屋上前の階段ってさ、そういうスポットだったりするのか?」
告白の。
「どこの学校でも同じじゃないの? 屋上か、空き教室か、校舎裏のスペースか」
「そういうものか?」
「知らない。最近はスマホでなにげなく話してるときにぽろっと、みたいなの多いみたいだし。なんてーの? 冗談にもとれるような軽いノリで、ついでみたいな感じでさ。ある意味予防線を張って告白するのが多いみたいね」
そうか。だとしたら須藤はその少数派、まさに当たって砕けろで真正面からいったのか。
「それで、そのまま告られたんだよな?」
「うん……。最初はモジモジしてたんだけど、なんかめっちゃまっすぐこっち見てきて……。もうそんな見んなよ、ってくらいに目を合わせてきて、好きだ、って」
照れくさいのか、髪の先を指でくるくると弄っている。
「ほら、定番だと、この後キミのどこそこが好きですとか、こういう理由で気になってますとかさ……あるじゃん?」
「まぁそうだろうな」
「こっちがそれ待ちしてたら須藤、また好きだ、って」
「……」
「もう一回、好きだ、って」
うん?
「もうそれは分かったから、だから私、あ、そう。って言ったの。それの続きは、って意味で」
まさか。
「そしたら須藤いきなり、ごめん、って言って、せめて友達ではいさせてくれな? って」
「ちょっとまて、俺はそんな気はないってフラれたと聞いたぞ」
「うん、私、須藤のことフってないから」
フってない? そんなはずは、だって俺は須藤から直接聞いたんだぞ? 百歩譲って、実際にフってなかったとして……
「って待てよ、百歩譲ったとしてもそんな勘違いするわけが」
「うん、だから須藤も勘違い野郎なの」
小湊さんはオレンジジュースに口をつけ……、呆れたとばかりにやれやれと、肩をすくめて息
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます