第282話
「お兄ちゃんのせいでヒドイ目にあったよ…。…ぐへっ……」
「それで…なにかいい案は浮かんだの?」
僕の膝にモフオがヘロヘロになりながら座り、モフオを踏みつけてモフコが話しかけてきた。
「なにも……。なあ…お前達…このポットから精霊達をだしたら…どうなるかしってるか?」
「多分…儀式は失敗して貴方は復活しない…」
「もし…俺が奇跡的に生き返ることができたら…?」
「さあ…。でも…お兄ちゃんが使ってたスキルは多分…使えなくなるんじゃないかな…。名前なんだっけ…あの…ディナイアルなんとか…」
なら…この方法はダメか…。なにか別の方法で生き返ることができれば…。
「…ステータス……」
「はい…」
「……あいつが言ってた準ずる形って…どういう意味だ?」
「…あれは……」
「……」
僕はステータスがあっさり答えようとしていたので違和感を感じた。もしかして…嘘をついているんじゃないかと…。
「…聞いてますか?」
「ああ…ごめん…。…やけに素直で驚いてたんだ……」
「私は…回りくどい言い方をしてしまうようですから…予測した結果を先に言おうかと思います…。回りくどいようですから…」
…こいつ…根に持ってるのか……。
「…その…さっきは…悪かった……」
「…なんのことですか?」
「回りくどいとか言って悪かったよ! あと…その…感情的になって…ごめん…。よくよく考えたら…お前のせいじゃない…。お前にこんな選択肢しか残せなかった俺のせいだ…。ほんと…ごめん……」
「……………過去に戻るという方法です」
「ああ…過去に戻る…。…過去に戻る? ……どういう意味だ?」
僕は急にステータスからSF的な話がでるとは思わなかったので、青い画面を凝視した。すると、画面にグチャグチャになった線が現れた。
「準ずる形…。それは…過去に戻り…この世界をもう一度…やり直すということです…」
「そんなことしたら…」
「はい…。これより先の未来は消えてなくなります…。当然…皆さんも…」
「そっ、そんなの…!」
「ただし…この世界線の構造状…同じ世界線での改変が可能です…」
……どういう意味だ? …ん?
僕はステータス画面の一部分が丸く点滅しているのが見えた。
「これは…」
「まず…これが内的観測地から予測されるこの世界線の構造です…」
「あっ、ああ…」
「そして…この赤く光る点滅箇所…。タイムクラッシュとでも呼びましょうか…。この時点から世界線が拡散しています。現在は徐々に収束していますが、なぜこのような形になっているかというと、貴方が予知を無視して時の流れを乱したためです…」
「ああ…」
確か…神様もそう言ってたよな…。
「…ですが…他の可能性も考えられます」
「…他の可能性?」
「……あくまで予想ですが、聞きますか?」
「…ああ……」
赤く点滅していた箇所から一本の糸のような物が分岐して進みだしたが、グシャグシャになった場所に絡みついてそれ以上進むことはなかった。
「これが…推測されるタイムシミュレーションです…」
…なんだ? …絡まっただけ……?
「……いや…まてよ…。まさか…そんなことが…」
ステータスは拡散する初期の場所を拡大してみせると、写真のような物が見えた。それは見覚えのある光景だった。
……これは…黒騎士を倒した場所…。
「…この場所で貴方が黒騎士になれば…あとからくる貴方自身によって倒されます…。そして…貴方は少しのあいだですが、潜在意識下で誤った選択肢を変更することができます…。そうすれば…限りなく近い形で目的を達することができる…ということでしょう…」
「…なっ!? 俺は俺に殺されるってことか!?」
「はい…」
「そっ、そんなバカなこと…。…じゃあ…すでに俺は何回もやり直してここにきてるのか…!?」
「あくまで可能性の話です…。貴方が保持しているスキルの特性を検証した結果…そういう可能性もあるという話です」
……俺のスキル…? どれだ…。発動していないヘイズルーン…。それとも…ニーズヘッグ…。それとも……。
「……ドゥラスロール?」
「はい…。あのスキルだけ特徴の異なる複数のスキルを発動する事が可能です…」
「あれは…敵が四体だったから……」
「そうかもしれません…。あれは一つのスキルを四分割したとも見れます…。ですが…こうも捉えることができます…。貴方が起こしたタイムクラッシュの影響を受けている…。そんな可能性もあるのです…」
僕は立ち上がって白い台座に向かって、しばらく黒いメモリーカードをじっと見ていた。
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