第221話

 …ん? なんか…変な音が聞こえるな…。

 それはどこかで聞いた…綺麗で怖くて不可思議な感じのする曲だった。

 どこで聞いたんだったかな…。これ…。…ん? 誰かいるのか…。

「戻りつつあるな…。さすがに…精霊まではむりだったか…」

 ……精霊?

「…だが、なにをする気だ? こんな予知は存在しなかったはず…」

 …誰だ? この声…。

「…まぁいい……。もう、接続は切ったんだ…。少し様子をみるか……。ふっ…。早く会いたいよ……。君に…」

 

「…えっ?」

 僕は重っ苦しい妙な胸騒ぎを感じで目が覚めた。僕は起き上がって、右手の鎖をみた。

「……」

 なんだったんだ? 今の夢……。…ん?

 僕はモゾモゾと動いたので毛布を取ると、そこにはシオンさんが目を開けて横になっていた。

「なっ、なんでいるんですか!?」

「…いや…その…。着いたから起こしにきたんだけど…。ついでに…」

 なるほど…。変な夢を見た理由がわかった気がする…。

「シオンさんのせいで、変な夢を見たじゃないですか!」

「ごっ、ごめん…」

 シオンさんは起き上がり、ずっと下を向いていた。言い過ぎてしまったのかもしれない…。

「あっ、あの…。冗談ですよ…」

「なぁ…。初めて、アルのベッドに潜り込んだこと覚えてるか?」

「えっ? 酔っぱらって強引に僕をベッドに連れていったやつですか?」

 シオンさんは顔を赤くして僕を叩いて否定した。

「ちっ、ちがうにゃ! というか、さっさとあれは忘れろ! わっ、私がいいたいのは…。コビットの国でのことだ…」

「…コビットの国? シオンさんがキノコになって、皆を倒しまくっててへこんだときのことですか?」

「……」

「…すいません」

 シオンさんは何も話さず黙ったまま僕の方をみていた。僕は怒ったのかと思い謝ったのだが、どうやら違っていたようだった。

「…君は一体…なにを倒したんだ?」

「なにって…。キノコの化物ですよ。こんなおっきな…。…どうしたんですか?」

「いや…いい…。そうだよな…。それであってるはずだ…」

「…そういえば、少し前にもいってしましたよね? …なにか気になることでも?」

「…時々、変な夢を見るんだ……。最近は毎日見ている気がする…」

「…気がする?」

 シオンさんは気になる言い回しをしたので尋ねてみると、笑いながら誤魔化した。

「…はははっ。いっ、いや、なんでもない。そっ、そうだ…。もうついたから、早く温泉にいってきたらどうだ?」

「そう…。シオンさんはどうする?」

「…私はこの辺で待ってるよ」

「はい…。じゃあ、いってきますね」

 僕は竜の国に空を飛んで向かった。上空からは火山が噴火しマグマが川のように流れ、木や花などの植物は見る限りではないようだった。


「こんなとこによく住めるな…。……あれ? この辺、涼しい…。…ん?」

 なぜかわからないが、急に辺りが涼しくなってきた。ただ、不思議な事に気温が下がったような感じではなく、ある堺から急激に温度が下がった。遠くには少しだが、緑色の景色もみえる。

「右側か熱くて左側が冷たいな…。…ん? 妙なものがあるな…」

 下を見ると水晶のついた石碑が建てられていた。

「…あれは冷却装置だよ」

 声のする方を向くとリアヌスが空に浮かんでいた。

「…ん? リアヌス、久しぶりだなー」

「くるなら連絡してくれればいいのに…」

「温泉に入りにきただけだから、入ったらすぐに帰るよ。あっ、あと、この前の返答書…と、手土産だ」

 僕がそれを渡すとリアヌスは書類を胸の中にしまい、袋の中身を軽く揺さぶった。

「…この手土産の中身は?」

「コーラとポテトチップスだよ。食べたがってただろ?」

「そっ、そうか! これが…! いっ、いやっ…。うーん…。困ったな…。早く食べたい…」

 嬉しそうにリアヌスは袋をパッと開けたが、急に困った様子で中を覗き込んでいた。

「どうしたんだ? 食べればいいだろ?」

「そうなんだが…。時期が悪くてね…。はぁ…。もう追いついてきたか…」

 リアヌスは残念そうに後ろの方をみていた。僕もその方向を見ると、赤髪の女と兵隊達がものすごい勢いで飛んできた。

「どこにいく気だー! バカ王子!」

「ミリア…。こっ、これには、深いわけが…」

「どうせ大した理由なんて…。…お前……」

 赤髪の女は出会った途端、僕を睨みつけ始めた。

「どっ、どうも…」

「…お前たちはこのバカ王子を連れてけ……。私はこいつと話がある…」

「ミッ、ミリア…。手は勘弁してくれないか? お土産があるんだ…。ほら、君にも一枚あげるから…」

 リアヌスはポテトチップスを一枚、彼女の国の中にいれた。彼女は食べ終わると袋をリアヌスから奪った。

「…お前たち、連れてけ!」

「ひっ、ひどいぞ! 返せ!」

「黙って城に帰ればあとで返す…。だが、逆らえば…」

「わっ、わかったから、やめるんだ! …はぁ……」

 リアヌスは兵士達に囲まれると、猫背になりドヨンとした空気をだしながら帰っていった。

 

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