第195話

「なんなんだ、それは…」

「まぁ、焦んないでよ…」

 少年は筒の上に丸い板を乗せ、次に板の上に城を乗せた。そして、城を指差した。

「まず、相棒達は魔王城にいる…」

「なっ!? なんだと!?」

「でも、そこはトラップでこんな感じの異次元空間に繋がっていたんだ…」

 少年は筒の上に丸い板を外して城を落としたあと、再度元の状態に戻した。

「なるほど…。落とし穴みたいだな…」

「あっ! 間違えたな…。まっ、いっか…」

「なにを間違えたんだ?」

「いや、もっとほんとは大きいんだよ…」

「…城がか?」

 私が質問すると、嘘のようなとんでもない話をしはじめた。

「そうじゃなくて、大陸の一部分を落とそうとしているんだ…。魔物達も一緒にね…」

「…なっ!」

「それで船とか作って、相棒が魔物達も外に逃がそうとしても、今度はこの蛇が邪魔して逃げれないんだ…」

 少年は蛇をくねくねと城の周りを徘徊させた。

「…魔族の中には空間移動が得意な種もいるだろ?」

「うん…。でも、その魔物達も首に爆弾入りのチョーカーをつけられてたんだ。しかも、全員洗脳されてて…」

「…爆弾に洗脳? なぜだ…」

「うーん…。サーティスってやつが、やったみたいなんだけど…。理由までは…」

 派閥か…。それとも別のなにか…。

「すまない。話を続けてくれ…」

「うん…。それでね…。チョーカーを外すのは割と簡単にできたんだ。この手袋でね!」

 少年は変わったデザインの手袋を私に見せてきた。

「なるほど…。だが、とんでもない人数じゃないか…。そんな人数、洗脳を解いて助けることができるのか?」

「もちろん…。無理だよ…。相棒だけじゃね…。相棒は助け出す順番を決めたんだ…。俺もちょっとは手伝ったけど、あとは魔物達にほぼおまかせだよ」

「…助け出す順番?」

「うんっ…。それは…。なんか飲み物持ってない?」

 少年は喉を抑えながら私を見つめてきた。なんだかこの子を見ると小さな頃の私をつい思い出してしまう。

「…コーラならたくさんあるぞ? お菓子もな…」

「ほんとっ!」

「ああ…。でも、コーラは冷やすぐらいしかできないが…」

「うーん…。まぁ、仕方ないか…」

 私が冷やしたコーラを渡すと嬉しそうに少年は飲んだ。私もついでに飲んだが、やはりタンサン入りではないとなにか物足りない気がした。

 

「えっと…。どこまで話したかな?」

「助け出す順番までだ…」

「そうそう…。まず最初に空間異動が得意な種族を助けたんだ…」

「ふむ…」

 まぁ、そうだろうな…。

「次に洗脳が得意な種族…。相棒の読み通り洗脳状態のやつにかけるのは割と簡単だったみたい。ほんとは解ければもっとよかったんだけど…。まぁ、次に拘束とか石化とか得意な種族…」

「なるほど…。空間移動して、サキュバスのような魔物に街中を洗脳させ一箇所に集める…。そして、再び空間移動して洗脳解除後に暴れるやつは拘束…。または石化か…。よくできた作戦だな…」

「まぁ、拘束とか石化とかの心配は問題なかったよ。相棒が実は真の魔王だってことに…」

 私はタンサン入りのコーラでもないのについ吹き出してしまった。

「…なっ、なんだと!」

「汚いな…。ハンカチ使う? ベチョベチョだけど…」

「ああ…。ありがと…。…大丈夫だ?」

 私は口元を服で拭いて再度尋ねた。

「そっ、それで…。…どういうことなんだ?」

「うん…。まぁ、魔王ってのは真っ赤な嘘なんだよ…。でも、サキュバス達に洗脳させてるから皆は信じちゃうよね…」

「なるほど、そういうことか…。だが、この蛇はどうする?」

 私はオモチャの蛇を手にとった。

「それはさ…。まず、相棒と俺とシャルで大陸の下にもう一枚補強したんだ」

 少年は城の下に板を乗せた。

「なるほど…。それで逃げなくてもいいと…」

「いや、これがダメなんだよ…。そもそも不安定だし…。蛇を操られたらとんでもないことになりそうだし…」

「なら、どうするきなんだ?」

「それでね…。この変にもう一枚弱い板を作って…」

「ふむ…」

 少年は城の下にある短い筒を外し、下に一枚乗せた。そして、短い筒を指差した。

「俺がここにどでかい穴をあける…。まぁ、もうあいてるんだけど…」

「…ん? いってる意味が…」

 少年は蛇を私の手から取ると穴の中に蛇を入れた。

「だから、俺が餌になってこの蛇をこの空間に落としたんだ」

 そういった後で少年は下の方の板を一枚のけて蛇を筒の中に落とした。

「…にゃぁあああ!? おっ、落ちてるのか!? 今、この蛇は!?」

「そうだよ…。それで、その後にこの厚い板をもう一度、相棒とシャルと俺で設置…。あっ、三枚でよかったな…」

「なっ、なんだと…」

 少年は短い筒の下に板を設置して頭をかいていた。

「それで、ここで海水が流れ込むんだけど…。この辺にエリックが作った補助魔法器具を山のように複製して海水を氷漬けにしたってわけ…」

「君を見捨たのか…。そんなバカな作戦アルが考えるはずない!」

「いっ、いや、俺は大丈夫なんだよ。相棒の分身みたいなものだし…」

「…分身?」

 私はそれからこの子の正体について教えてもらった。

 


 

 

 

 

 

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