第169話

「いや、いいんだ…。確か…六体いるんだったよな?」

「うーん…。正確には闇の精霊を入れて七体いるみたいなんだけど…。残りは氷と風の精霊かな…」

 シオンさんは不思議そうな顔をしていた。

「…ん? 闇と火の精霊は手に入れたのか?」

「そっ、それは…その…闇の精霊は…僕の中にいた黒騎士だったんです…」

 僕の言葉にみんなは驚いて席を立った。

「なっ!?」

「にゃ!?」

「なに!?」

「…でも、あいつはあの黒い魔物に取り込まれてしまった。倒せば元に戻るかもしれないけど…」

 戻らなければ…。いや、それでも最善を尽くすしかない…。

「なるほど…。ギャンブルだな…」

「俺には無理だな…」

「僕もだにゃ…」

 みんなは下を向きながら椅子に座った。

「…ごめん。もっと早く気づいていれば…」

「アル、謝らないでくれ…。それで、火の精霊はどうしたんだ?」

「それは…リアヌスが…」

 僕が答えるとシオンさんの表情は変わっていないように見えたが、少しぎこちなかった。

「そうか…。なら、あいつにも協力してもらわないとな…」

「…はい」

「だとしたら、問題は氷の精霊か…。…ここじゃ、召喚はできないよな?」

「たぶん…そうですね…。…試しにやってみましょうか?」

「…ああ」

 僕は氷の精霊のイメージをしながら名前を言い続けたが、特になんの変化も起きなかった。まぁ、僕の方に問題があるのかもしれないが…。

 

「やっぱり、ダメ…みたいですね…」

「みたいだな…」

 もしできるなら、精霊たちが風の精霊を探す必要なんてないと思うし、ある程度あっちから接触してくれないと無理なのかもしれない。まぁ、他の精霊達なら居場所を知ってるかもしれないけど…。

「ノスクはなにか知ってるか? ウィンディーネからなにか聞いてない?」

「うーん、聞いてないにゃ…」

 ノスクは首を横に振って返事をした。

「そっか…」

 まぁ、エルフの王国に戻ってから精霊達に聞けばいいか…。

 そんなことを考えているとシオンさんが口を開いた。

「…心当たりはないのか?」

「…心当たりですか? …エルフの王国に戻ってから精霊達に聞くのはダメなんですか?」

「…君が先入観を持つ前に聞いておきたいんだ。…それに考えるのにも時間がいるんだ。…時間のある今の内に考えるべきだろ?」

 確かに…。こういうときは…。

「うーん…。シオンさん、世界地図持ってないですか?」

「地図か…。…これでいいかな?」

 僕は地図を見て氷の精霊の居場所を考えた。

 まず、風の精霊はエルフの国…。そして、ノームはコビットの国…。あと、ヴォルトはドワーフの国だったよな…。ウィンディーネは猫の国…。いや…剣に閉じ込められてたから違うのか…。

「ノスク、ウィンディーネは元々どこにいたか知ってるか?」

「たぶん神族の国だと思うよ。ご先祖様の資料にもかいてあったし…」

「神族の国か…。シオンさんはなにか知ってますか?」

 シオンさんは口元を抑えた後、少し考えこんでいるようだった。

「ウィンディーネか…。確かに神族の国の可能性は高いかもしれないな。私達の国では水は神聖なものとされていたんだ…。祀る所もあったと聞いたことがある」

「そうなんですね…。ちなみに神族の国はどのあたりですか…」

「このあたりだ…」

 シオンさんは地図を指差した。

 なるほど…。こうやってみると、このあたりだけなにもないな…。

「あの…ここはなんの国ですか?」

 僕が指差すと皆は地図をみたまま、誰も話さなかった。

「……」

「……」

「……」

 なにか…まずいこといったかな…。

 周りの皆はなぜか唇をきつく結んでいた。

「あっ、あの…」

 僕が再び声をだすと、シオンさんは我に返った様だった。

「あっ、ああ…。すまない…。ここだったな…。アルはこの場所が怪しいと思うんだな?」

「はい…。そうなんですけど…。皆、どうしたの?」

 エリックは頭を掻きながらため息をついた。

「はぁー…。そりゃそうだろ…。誰でも知ってるぜ…。ここは魔族の国だ」

「魔族の国!?」

「そうだにゃ…」

 なっ、なんてことだ…。

「いっ、いやでも、僕の勘違いかも…」

「そうか…。まぁ、あそこにはどちらにしても行くことになるか…。魔王との戦いはあと五日後だったよな?」

「はい」

 僕が返事をするとノスクとエリックは僕にコーラを吹き出した。

「おっ、おい、なんの話だよ!」

「そっ、そうだにゃ!」

「実は…その…。かっ、顔拭いてからでもいい?」

「ああ…。すまん…」

「ごめんにゃ…」

 僕はバッグからタオルを何枚か取りだしてテーブルの上に置いた後、顔を拭いた。

「実は…」

 僕はエルフの王国をでたときに今の魔王サーティスと戦いになる事をになった事を説明した。

 

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