第155話
焦った様子の神様が指差す方を見ると、リアヌスは何者かに襲われ紙一重で攻撃を避けていた。
「なっ、なんで、早くいわないんだ!」
「あっ、あなたが話を聞かなかったんです!」
…うっ!
「はっ、早く助けに行こう!」
「はい!」
僕は急いでデコボコな斜面を下っていくと、巨大な岩山の陰からマグマの赤い光に照らされながら飛空艇が現れた。それは、この前まで僕が乗っていたあの飛空艇だった。
「…ってことは、あれは!?」
「どっ、どうしたんですか? 助けにいかないんですか?」
目を凝らしてよく見ると姿こそフードを被ってよくわからないが、リアヌスを襲っていたのはどこかで見たことのある剣捌きをした剣士だった。
「おっ、おい! やめるんだ!」
僕の呼びかけに二人は静止すると硬直状態が続いた。僕は間に入りリアヌスに話しかけた。
「リアヌス、なにがどうなってるんだ!?」
「きっ、きてくれて助かったよ…。どうやら、君を勝手にこの国に連れてきたのが不満みたいだ。君がいなかったから、私がなにかしたのではないかと思われたのかもしれないね…」
「すっ、すまない。あれは俺も予想外の出来事だったんだ…」
僕は疲弊して息を切らしているリアヌスに近寄り謝った。
「色々といいたいことがあるが…。まあ、君が無事でよかった…」
僕は振り向きフードを被った人物に言葉を選びながら話しかけた。
「えーと…。…謎の剣士さん? ちょっと船に戻ってくれませんか? 俺はこの通り大丈夫だからさ?」
フードを被った人物は、コクっとうなずくと剣を鞘に入れて、目の前の岩山を羽でも生えているかのようにポンポンと飛び船に戻っていった。それを見るとリアヌスは安心したのだろう。ヨロヨロと情けない姿で地面に崩れ落ちた。
「…つっかれた」
「…大丈夫だったのか?」
僕はリカバリーをかけようとしゃがみこんだが、特別怪我をしている箇所は見当たらなかった。
「大丈夫だよ…。まあ、本当に殺す気はなかったみたいだからね…。お互い探り探りさ…。なかなかの使い手だね」
「リアヌス、あの船に乗っているやつは見逃してくれないか?」
「…仲間なのかい?」
「…ああ」
リアヌスはフッと笑ったあと、起き上がった。
「…いい仲間だね。ここまで君を追いかけてくるなんて普通しないよ? まったく…。ますます君を手に入れ辛くなったな…」
「…手に入れる?」
「君の全てが欲しいんだ。全てがね…」
リアヌスは顔を近づけて僕の耳元でそうつぶやいた。僕はそれを聞くと何故か背中の辺りがゾクゾクとした。
…カゼか?
「まっ、まあ…お互い無事でよかったよ」
「そうだね…。…ところで、そこの可愛らしいお嬢さんは誰かな?」
リアヌスは僕の後ろに隠れていた神様をみて尋ねてきた。
…神様ってこの世界でどういう扱いなんだろう? まあ、わからない以上は下手にいわないほうがいいか…。
「あっ、あんまり似てないと思うけど妹なんだ。すっごく年の離れた…」
僕は神様の見た目の事を考え無意識にでた自分の言葉に笑いそうになったが、後ろからバチッバチッとスタンガンのような音が聞こえ笑う気が失せた。
「…妹なのか?」
リアヌスが不思議な顔をして、そう尋ねると神様は元気よく答えた。
「どうも、妹です! 兄がお世話になっています!」
僕はそのギャップに少し恐れを感じ念を押すことにした。
「リアヌス…。色々といいたいことがあるとは思う。でも、妹なんだ…。これは譲れない」
「まっ、まあ、色々と事情があるみたいだし深くは聞かないよ…。ところで黒騎士や黒い魔物はどこにいるんだ? 不穏な匂いを感じなくなったんだが…。まさか、もう倒したのか?」
「倒したというか、色々複雑な事情があって…」
僕はリアヌスに事の顛末を教えた。リアヌスはそれを聞くと少し考え込んでいた。
「なるほどな…。一難去ってまた一難か…。いや、二難去って特大級の一難か…」
「そっ、そういうわけで、一旦エルフの国に帰ろうと思う…」
「竜の国を案内しようと思ったんだが…。まあ、遊んでいる暇はないか…。約束どおり君が戻っている間に神族の国は私が責任を持って独立させておくよ」
僕は深々と礼をした。本当にリアヌスには感謝の気持ちしかない。
「…ありがとう」
「約束なんだから気にしなくていいよ 。…それと、私からもお願いがあるんだが、魔族との戦いに協力してくれないか?」
あまり戦いたくはないけど、あいつもヤバそうな気配がしてたし仕方ないか…。
「わかった…。でも、狙うのはサーティスと関係者だけだ。無関係で抵抗しないやつは狙わない。それでいいなら手伝うよ…」
「…それで問題ない。さて、私も帰るか…」
僕は帰ろうと羽を広げ帰ろうとしているリアヌスに話しかけてた。
「ちょっと待ってくれ。帰る前に一つ聞きたいんだが、リアヌスの最近手に入れた力って、精霊というか悪魔の力なのか?」
「お見通しか…。まあ、隠す気はなかったんだが、それがどうかしたのかい?」
「いや、少し気になっただけだ。…でも、どこいるんだ? 姿が見えないな…」
僕はリアヌスの周囲をもう一度注意深く確認したが、それらしいものは見えなかった。
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