第126話
神様は再びしばらく目を閉じた後、何故か笑って答えた。
「最初、あなたを選んだ時どうなるかと思ってました…。魔法も使えないし、強そうでもないし…」
「わっ、悪かったな…」
「でも、今ならいえます…。あなたを選んで本当によかった。改めてお願いします…。この世界を救ってください…!」
「…ああ、任せとけ!」
僕が元気よく答えると、神様は金色の光を放ちながら、宙に浮かび上がり僕の頭に触れた。キラキラと鏡のようなかけらが舞って、そこには無数の僕が映っていた。
「あなたには消えてしまった未来を見せます…。本当に悲惨な未来です…」
「…なんで未来を?」
「今の運命に抗うためです…。あなたにこれを見せることで、未来を不確定な状態に戻すことができるようです…」
「なら、早く…」
神様は僕の言葉を遮り、深刻そうな表情をして尋ねてきた。
「ですが…見た事を後悔するかもしれません…。…それでも、本当にいいですか?」
「…ああ……」
「それではいきます…。…無事に帰ってきてください」
神様の声を聞いた後に辺りは強く輝き出した。その輝く光を見ると、僕は眠るように意識がスッと消えた。
「…アル、おきてよ。…ついたよ?」
僕は誰かに揺らされて起こされた。僕はベッドから起きて寝ぼけた頭で横を見ると、アリスが横に立っていた。
「ああ…」
なんだ…。…さっきのは夢?
アリスに状況を確認しようとすると、僕の体は勝手に立ち上がった。
…えっ? 体が勝手に動いてる…。不思議だ…。…これが消えた未来なのか?
僕と皆はハッチから降りてどこかに向かっているようだったが、どこにいこうとしているのかわからなかった。急にすべての音が遮断されて無音の世界になったのだ。
ここは…どこだ? 人間達が沢山すんでるみたいだけど…神族の国か? どこかの村に入ったみたいだな…。…あれ? この村…人間達がいない? どこかにいったのか?
僕が疑問に思っていると、急に景色がぐるぐると回りだした。
…うぉ! びっ、びっくりした…。って、なんだ…このでかいドラゴン…。
目の前には血まみれになった赤いドラゴンが目を開けたまま倒れていた。
…こいつ、死んでるのか? 一体だけじゃないな…。何体も…。まさか、魔王に…!?
僕の体は勝手に動きだして、僕は走りだした。そして、牙を向き襲いくる何体ものドラゴン達を次々に容赦なく叩き斬った。
なんだこれ…。…俺が殺しているのか? …なっ、なんで? …どこにいくんだ!? おっ、おい、やめろ! なんで、殺してるんだ!?
僕は止めようと思い心の中で叫んでいたが全く止まらなかった。僕が数千体のドラゴンを殺し終わった後、また景色がぐるぐると回りだした。
なっ、なんで、俺…あんな事…。
僕は自分自身の行動に驚いていると、目の前に巨大な赤い扉が目に入った。
…ん? …なっ、なんだ、扉? この部屋にきたかったのか? 一体、なにがあるんだ?
この世界の僕は血まみれになった手で扉をゆっくりと開いた。それは開いてはいけない禁断の扉だった。
おい…おい…。なんだよ…。まさか、これ……。
そこには…決して表現してはいけないような地獄の光景が広がっていた…。
…うわぁあああああ! うっぐっ…。あぁ…。はぁ…はぁ…はぁ…。
僕が悲鳴をあげていると、また景色がぐるぐると回りだした。
目の前には僕に剣を向け悲しそうな表情をしながら、皆が立っていた。声は聞こえなかったが、皆は僕を止めようとしているようだった。
おい…やめろ…。やっ、やめろ! やめろって!
僕はスネークイーターを解除して、迷いもなく黒い大剣を抜いて襲いかかった。容赦ない非常な攻撃は彼らを全滅させるにはそうかからなかった。
みっ、みんな…。みんなが…。おっ、おい、お前…。
そして、僕は想像もしていない…想像もしたくない行動をとりだした。
なにしようとしてるんだ…。やめろっ…。…やめろぉお! 俺はそんな…そんなこと知りたくない…。…やめろぉおおおおおお!
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「…アル、大丈夫? うなされてたけど…」
「うわぁあああああ!」
僕はその声に驚いてソファーからバタッと落ちた。目の前のアリスは駆け寄ってきて僕を心配そうに見つめていた。
「…だっ、大丈夫?」
僕は今の状況がまるで理解できなかった。
「…アッ、アリスか? …生きてるのか?」
「他に誰に見えるのよ…。…っていうか、寝ぼけてるの?」
僕は床から立ち上がり、ヨロヨロになりながらステータスを開いてスキルを確認した。
「ステータス…スキルを表示しろ…」
「了解…」
そこにはただ一つを除いてなにも表示されていなかった。
「夢じゃ…ない…」
「ねぇ? どうしたの?」
「…近づかないでくれ……」
「なっ、なによ…。…もしかして、さっきの事、怒ってる? ごめん…。さっきのは違うの…。私、本当にアルのこと心配で…」
「いっ、いいから、俺に近づくなぁあああ!」
僕は大声をだしてアリスを突き飛ばした。アリスはソファーにぶつかった。
「…きゃっ!」
僕は色々な感情がごちゃまぜになリ、自分でも訳がわからないくらい混乱していた。
「はぁ…はぁ…。ごめん…」
「…アッ、アル?」
「うっ…!」
僕は吐き気がして両足を地につけて、片手を口に抑えた。
「ちょっ、ちょっと、だっ、大丈夫?」
アリスは僕を抱きかかえて、背中をポンポンと叩いた。僕は抵抗しようとしたが、悔しい事に安心してしまい全く力が入らなかった。
「……」
「…落ち着いた? 悪夢にうなされてたんだよ…。大丈夫…。夢だから…」
「……ちがう」
「…えっ?」
「……夢じゃない。夢じゃなかったんだ…」
僕はそこで意識を失い、次に目覚めたのは一週間後だった。
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