第112話
ノームはシャルに話しかけているようだった。シャルはノームが体を動かすたびに相槌をしていた。
「ふんふん…。すでに、誰かの加護を受けてるから無理だって…」
「そう…なのか?」
…神様の加護か? アイテムくらいしか貰ってない気もするけど…。
「そういえば、シャル…。みんなはどこにいるんだ?」
「みんな? …あー! いい忘れてた…。ずっと呼んでたけど応答しないから困ってたんだよ」
「呼んでたって?」
「その服、通信機能がついてるんだよ」
「そうなのか? じゃあ、通信機能起動…」
僕がそう唱えるとザーッと耳元で音がなりだした。どうやら船につながったようだ。
「…もしもし、聞こえる?」
「そっ、その声、アル!?」
「ああ…。その声はアリスだな」
「いっ、今、大変なの!」
アリスはかなり動揺しているようだった。
「どっ、どうしたんだ!?」
「シャルが急に倒れて意識を失ってるみたいなの…。脈はあるみたいなんだけど…」
「ああ、それなら…」
僕はシャルがこちらに来ていることを説明した。
「なんだ…。そういうことなの…」
「…シオンさんはどこにいるんだ?」
「シャルを抱えてベッドに連れて行ったわ…。私の方から伝えておくね」
「シオンさんが戻ってきたら、また連絡してくれ。通信オフ…。…これでいいのか?」
特に返事もないし、大丈夫みたいだな…。
「…みんな、どうだった?」
「急にシャルが倒れたからシオンさんがベッドに連れてってるらしい」
「えぇ!? シオンさまが…。ノーム、ちょっちょっとだけ戻してよぉ〜。ふんふん…。わかったよ…。仕方ない…。アルで我慢するか…」
シャルは残念そうな顔で僕に抱きついてきた。妥協案といったところだろう。
「それで、ノームになにをしてもらえればいいんだ?」
僕が尋ねるとウィンディーネはテーブルの上にノームとヴォルトを連れていった。
「地…水…雷の精霊が揃えば封印の中を見る事ができるのよ。まさか揃うとは思わなかったけど…。じゃあ、始めるわよ」
精霊達は輝きだして、あたり一面に青い魔法陣が次々に現れた。
「すっ、すごいな」
「確かにそうだね。ウィンディーネもなかなかやるじゃない。…ん? アッ、アル! ウッ、ウィンディーネの様子が変だよ!」
ウィンディーネの方を見ると大きく目を開き震えていた。よく見るとノームやヴォルトの様子もおかしかった。
「…ない」
「どっ、どうしたんだ? 大丈夫か?」
「悪魔が…いない…」
「いないって…。なっ、なにかの間違いじゃないのか? 」
ウィンディーネは再び目をつむった。
「まっ、まって…。いっ、いた…。でも、おかしい…。どういうこと…。活動が停止している? なにこれ…。封印が!? まずい! なにかが…」
ウィンディーネが何かを僕達に伝えようとした瞬間、どこからか爆発音が聞こえあの恐ろしい声が聞こえてきた。
「…ギャァアアアアアアォオオオオ!」
「なっ、なんだ!? この叫び声!?」
「やっ、屋根の上になにかが落ちてる!?」
窓の外を見るとあの黒い尻尾がまるで雨のようにぼとぼとと落ちていた。
「こっ、これは一体?」
よくわからないけど、かなりまずい状況だ…。でも、どうすればいい…。逃げる場所なんてないぞ…。
「アッ、アル!?」
「どうした!?」
「そっ、それ…」
驚いたシャルの方を見ると何故か僕の右腕を見ていた。僕は視線の先に目をやると右腕があの恐ろしい魔物の姿になりつつあった。
「なんだよ…これ…。なっ、なんでだ!? 解除してないのに…。広がっていく!」
ウィンディーネは僕の右腕を見つめ、驚きつつも何故か納得しているような顔をしていた。
「まさか、あっ、あなたは…」
「…ぐぅぁああああ!」
体中に激痛が走りどんどん視界がぼやけていった。
まずい…。痛みのせいでリカバリーがうまく発動できない。気を失いそうだ…。
「…ケタ……」
…誰だ? 今の声…。
「はあ…はぁ…」
「ヤット…ミツケタ…。ワタシタチノ…ユニオン… !」
「…っ!」
その奇妙な寒気のする言葉を聞いたあと僕は気を失った。
「…こっ、ここは?」
なにも見えない…。よくわからないけど、いつものあの変な夢なのか?
「やぁ…。かなりまずい状況になったね…。まさか、君の中にあの尻尾が紛れ込んでいるとはね。気づかなかったよ…」
やはりいつもの空間のようだったが、声の主はまた少しだけ大人びていた。
「…今、どういう状況なんだ?」
「目の前にテレビがあるだろ? 見てみなよ」
「…テレビ?」
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