第71話
「ひゃっ…ひゃい…」
シャルの方を見ると少し怯えていたようだった。
「さっ、さて、そろそろ城の中に入ろう。色々説明しないといけないし…。王様に会いにいこう」
僕達は扉を開け城の中に入ると、兵士達やメイドが慌ただしく働いていた。ただ、怪我人がいるわけでもモンスターがいるわけでもなく、恐らく現状確認だろう。僕達はそんな様子を見ながら、シャルに貴賓室まで案内され部屋の中に入った。
「アルとアリスさま…。アッ、アリスは貴賓室で待ってて…。そっ、そうだ! お父様にいわないと…。アル…約束は守るからね」
シャルは駆け足で何処かにいってしまった。
「アルのせいで完全に勘違いされたわよ! わたし、怖がられてるじゃない!」
「勘違いじゃないだろ…。ごっ、ごめん…。冗談だって…」
アリスは恐ろしいオーラを放ってきたので、僕はすぐに訂正した。本当に恐ろしいやつだ。
「全く…。…ところで、シャルとどんな約束したの?」
「うーん…。さっきの薬の件じゃないのか? まあ、待っておこう…」
しばらくするとシャルや王様や大臣達が部屋に入って来た。
「アル、説得できたよ! 約束通り私も旅についていくからね!」
「ええっ!? アル、そんな約束したの!?」
「なっ!? しっ、してないって! …シャル、危ないからついてきたらダメだ!」
「でも…手伝わないと…」
「シャル…。危ないからやめた方が…。まあ、私も反対できる立場じゃないんだけど…」
僕もそう思う…。手伝ってくれる気持ちは本当に嬉しいけど、流石に断っておこう。
「シャル…。気持ちだけ受け取っとくよ。でも、ダメなものはダメだ…」
「うーん…。ダメっていっても…。私が鍵なんだよ?」
「…どういう意味なの? 鍵って?」
「だからっ、勇者の扉を開く鍵は私なんだよ!」
「またまたー。そんな嘘をいっても…」
僕達は王様の方を見ると王様は苦笑いしていた。
「…ええー!」
「…ええー!」
僕達は声をだして驚いてしまった。王様に話を聞くと鑑定眼のスキルこそ代々王家が受け継いでいる勇者の鍵らしい。そして、現在そのスキルを受け継いでいるのは…なんとシャルなのだ。
「…わかった? …嘘じゃないからね。…アルも知ってるでしょ?」
まあ、確かに…。
僕はシャルのスキルを思いだしていると、アリスが声をかけてきた。
「…アル、そうなの?」
「ああ…。間違いなく本物だった。わかった…。シャル、よろしく頼むよ」
なかなか大変な鍵を手に入れてしまったようだな…。はぁー…。
「…うん! アリスさまもよろしくね!」
「うん! でも、アリスさまはやめてね…」
「じょ、冗談だよ…。それじゃあ、アル…。皆に今までの戦いを説明してよ」
「確かに私も気になるわ。…って、なにこのモグラ!? モンスター!?」
「いや、違う違う。モンスターじゃない。ノームだよ…。全く、急にいなくなったと思ったら…。お前、どこいってたんだよ…」
僕はノームの頭を撫でた後、今までの事を説明した。ただ、丁寧に説明したつもりだったが、皆の表情を見る限りアリス以外はあまり伝わってないようだった。
「…という感じなんです。…わっ、わかりづらいですかね?」
僕の説明が終わると、シャルが擬音の多い言葉を使いながら補足していた。
「…って感じで、キノコがドーンとなって、アルがバババッてなってね…。カキッーンとなったあと、バーンとなってヒューと落ちてきたんだよ。それからね…」
…っていうか擬音多過ぎじゃないか? これじゃ、なにがなにやら…。…ん?
そう思いながら周りを見ると、僕の説明より納得しているようだった
「なんか…」
なんか…釈然としない…。
「アルって…本当にすごいのね…。全然見えないけど…」
「最後のは余計だ。そういえば、アリス…。シオンさんは?」
「今は…そっとしといてあげて…。怪我はないけど…色々、大変だったんだから…」
「まあ、無事ならいいけど…」
その後、シャルの補足が終わり王様に感謝されると部屋に案内された。そして、僕は美味しい料理を食べてお風呂に入った後、部屋に戻っていた。
「いい湯だった…。…ん?」
ふと前を見るとアリスの部屋の前にシャルが立っていた。どうやら、例のプレゼントを渡しているようだ。
あまり見ないようにしておこう…。次はなにをされるかわからない。
僕はアリスの部屋の前をさっと静かに通り過ぎて、自分の部屋に入った。まあ、チラッとだけ見えたアリスの顔は御満悦のようだったが…。
「俺の分はまた今度作ってもらうか…。今日は疲れたから…寝よ…」
僕は電気を消してベッドに入ると、誰かがドアをノックした。
…ん? …誰だ? 部屋をノックして…。まぁ、アリスのやつが自慢しにきたんだろうな…。大人バージョンのアリスか…。
「みたいけど…。ダメだ…。まぶたが…。眠い…。ぐぅー…」
僕はそのまま眠ってしまった。
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