第64話
僕達はゆっくりと木陰に降りた。周囲を確認したがどうやら敵の姿はないようだ。
「…ここなの?」
「もう少しあっちに進んだ所になにかがいる」
僕は森の奥を指を指して教えた。
「了解…。警戒して進みましょう…」
「ちょっと待ってくれ。進む前にさっきのゴレームってやつを作ってくれないか?」
「まあ、いいけど…」
彼女は近くにあった大きな岩の所まで歩いていき、両手で岩に触り魔法を唱えた。
「…ゴーレム!」
そうすると岩の一部がはがれ落ちて、シャルと同じ大きさぐらいのロボットのようなゴーレムができあがった。
「凄いな…」
「まあ、こんなところよ…。ただ、動かすにはMPを使うし、ずっと使いっぱなしにするには向いてないわね…」
シャルがそういったあと、人形は崩れ落ちてただの岩の塊に戻った
「なるほどな…」
…さて、物は試しだ。戦力になる可能性があるのなら、僕もゴーレムを作ってみよう。でも、外面のイメージはなにがいいかな…。シャルのカチコチのロボットみたいなデザインはマネしてるみたいで面白くないし…。
「…ねぇ、どうしたのよ?」
「ごめん。ちょっと…考え事…」
うーん…。そうだ…。よし、ノームにしよう…。ゲームによくでてくるモグラみたいなデザインで…。僕より半分位の身長で全ての土属性を操る精霊みたいなゴーレムを作ろう…。まあ、イメージは自由だ…。いくぞ…。
「ねぇ…。まだな…」
僕は手を地面につき唱えた。
「…ノーム!」
…やべっ、呪文を間違えた。ゴーレムだった。…ん?
下を見ると土がボコボコと膨れ上がり、気づけばイメージ通りのゴーレムになっていた。完成したゴーレムはまるで生きているように動きだし、辺りを見たあとにあくびをしていた。
「…なにこれ?」
「なにって…ゴーレムだよ」
「いや、違うよ! …こんなの見たことない。本当に生きているみたい」
シャルはしゃがみこんで、熱心にモグラのようなゴーレムを見ていた。
「…っていってもな。なんなんだろ…こいつ?」
シャルは立ち上がり振り向いた。
「わからないよ。でも…。きゃあああー」
シャルの驚いた顔を見てすぐさま後ろを見ると、ニ体のキノコのモンスターが襲いかかってきていた。さっと剣を抜き構えて叩き斬ろうとした次の瞬間、キノコ達は土の檻に閉じこめられていた。そして、段々と檻が変形していき十字架に張りつけになっていた。
「…凄いな。…シャルがやったのか?」
「わっ、私じゃない…」
「…じゃあ、誰が?」
「…この子だよ」
シャルは振り向いてのんびり背伸びしているゴーレムをみていた。
「…こいつがやったのか? …まあ、いいか。先にトドメを刺そう…」
僕は剣に火の魔法をエンチャントさせ赤々と燃え上がらせた後、キノコ達を叩き斬ろうとした。しかし、僕が作ったモグラのようなゴーレムが柔らかな足で僕の腹をドロップキックし気付けば数メートル吹っ飛んでいた。
「…だっ、大丈夫?」
シャルは近づいてきて心配そうに僕を見つめていた。
「だっ、大丈夫だ。…おい、クソモグラ! なにしやがるんだ!」
僕は起き上がりゴーレムの方を見ると、手をバツ印にしていた。
…どういう意味だ?
「なにか理由があるのかな?」
正解しているのかわからないが、ゴーレムは鼻をピクピクさせてうなずいた。
「理由ってなにがあるんだよ。増殖を防ぐには火の魔法しかないだろ?」
ゴーレムは手をバツ印にして首を横に振った。どうやら違うようだ。
「…他の魔法を使えって事?」
モグラのようなゴーレムは首を縦に振り手を丸にした。どうやら正解のようだ。
「ほかのって…なにがあるんだよ。…水?」
ゴーレムは首を横に振った。…違うようだ。
「じゃあ、土…」
再度ゴーレムは首を横に振った。…これも違うようだ。
「うーん、雷?」
ゴーレムは首を高速で横に振った。…これも違うようだ。
「じゃあ、風?」
ゴーレムは更に高速で横に振った。
「わかった! 氷か!」
ゴーレムは足を踏みならしながら首を横に振った。
「もう…ないよ」
そうか、わかったぞ! これかっ!
「わかったぜ、ゴーレム…。つまりは、闇の魔法で完璧に塵も残さず消せって事だな?」
そういうとゴーレムは急に走ってきて再び僕にドロップキックをした。僕は宙を舞い空を見上げていた。
…まあまあ痛い。
「だっ、大丈夫? 怪我ない?」
「…っ! このクソモグラが…痛ってえな…」
「…ポーション使う?」
「…大丈夫、怪我はないみたいだ。まあ、少々怪我してもリカバリーすれば…。まさか…リカバリーなのか?」
ドロップキックをしてきたクソモグラは手を丸にして満足した表情でうなずいた。
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