第59話

 僕は城の中に入ると周りを見渡した。

「ここがコビットの城か…」

「そうみたいね…」

 なんというかコビットの城の中を例えるなら、小学生達がやっている劇の中の世界みたいな場所だった。周りにいるのは小さなコビットだらけでメイドや兵士達…。そして、階段や柱も小さく本当にそんな感じがした。

「…ん?」

 ただ、僕が周りをみた中で一つ違和感があったのが兵士達の服装だ。兵士達をよく見ると、明らかに鎧のサイズが合ってないような大人のサイズのものを着ていてブカブカだった。…まあ、これはこれで小学生らしいといえばそんな感じもするかもしれない。

「さて…どこにいけばいいんだ?」

「うーん。ここで待ってたら誰か案内してくれると思うんだけど…。…誰かに聞いてみよっか?」

「…そうだな。まあ、勝手に城の中を探索する訳にもいかないし…。…ん?」

 僕が悩んでいると小さなメイドが声をかけてきた。

「あのーシオン様のお世話係の方ですね? お荷物があればこちらに…」

「お世話係? いや、俺達は…」

 アリスのペンダントを見せて要件を伝えると、何故かとても驚いた様子で貴賓室に案内された。心当たりはあの子しかいないが…。


「…流石に椅子やテーブルは大きいんだな」

 部屋に入ると、やはり貴賓室というだけあって、ふかふかで座り心地のいい椅子が置いてあった。大きさも僕達が座るのには、ちょうどいい大きさだ。

「…まあ、そうね。私達の国でもお客様がくるときは失礼のないようにその時に応じて模様替えする時もあるからね」

「…まぁ、完全にお姫様にやられたけどな。俺はいいけどアリスまでいつの間にかお世話係になってるし…」

「……」

 僕がそんなことを言うと、アリスの表情は固くなった。

「そういえば、メイドさんが帰った時…扉越しに聞こえたんだけどさ…。姫様にやられた!っていってたよ。ぷっ…ははは…」

「まあ、別にそんな事はどっちでもいいけど…。あの子とは後で二人っきりで話す必要があるようね…。ふふふふふっ…」

 笑っていたが、アリスは完全に怒っているようだった。僕はその様子を見て少し冷静になった。

「……」

 …いっ、いかん! このままでは本当に外交問題になる! 

「ふふっ…。まずは…どうしようかしら…」

「アッ、アリス!? あっ、あとでおいしいもの食べてから考えよう。機嫌直せって…。俺はアリスの服のデザインは冒険者ぽくって結構好きだぞ…。…なっ!?」

 僕は焦ってアリスのご機嫌を取ることにした。こんなことでは無理かもしれないと思っていたが、以外にも効果バツグンだった。

「…そっ、そうよね? カッコいいわよね?」

「間違いなくカッコいい!」

「そうよね! きっとあの子のセンスがないだけなのよ」

「そうそう」

「あとで、ご飯おごってくれるのよね!」

 僕はアリスの笑顔を見ながら、小声で返事をした。

「……ああ」

「じっ、実はね! いきたいとこがあって…」

「…どこだ?」

「ええっと…」

 僕とアリスがなにげない会話をしながら待っていると、ドアの方からゲッソリしたシオンさんが現れた。

「やあ、二人共…。なんとか終わったよ…」

 話を聞くと今まで王様とお姫様二人に説得され続けていたらしい。ただ、丁寧に婚姻の話を断る事を伝えると王様は意外にあっさり受け入れてくれたらしい。まあ、当然、お姫様の方は泣きながら部屋に戻ったらしいが…。


「たっ、大変だったね…。シオンさん…」

「…ああ……。まあ、なんとか終わったよ。もう少ししたら、王様が大臣達を連れてきて現状を説明してくれるらしい。ただ、耳打ちされてから、王様の様子がおかしくてな…。慌てていたが、なにかあったのかな?」

「まっ、まあ、バタバタしてたんだよ」

 きっと、アリスのことだろう。流石にこれ以上アリスを刺激するのはまずい。

「そうか…」

「そうだよ!」

 僕達が話していると小さな王冠をつけた可愛らしい子供が先頭に立ち、十人ほどのお供を引き連れぞろぞろと部屋に入ってきた。恐らく小さな王冠をつけている子供が王様なのだろう。部屋に入りアリスを見つけると近寄ってきて挨拶をした。


「アリス姫、お久しぶりです」

「おっ、お久しぶりです」

 アリスは慌てて椅子から立ち上がると、ぎこちない動きでお辞儀をした。僕もそれを見ると椅子から慌てて立ちあがった。

「お出迎えできずにすいませんでした。どうやら手違いがあって…。まさか、姫様自らがこられるなんて思いもしませんでした。本当に申し訳ない事を…」

「いえいえ、気にしていません」

「本当に遠いところからきてもらい、ありがとうございます。ところで、お父上は元気ですかな?」

「はっ、はい! お父上は元気です。王様もおかわりのないようで安心致しました」

 アリスがそういうと王様は苦笑いして答えた。

「まあ、私は変わりないんですが、本当にまずいことになっていて…。…ところで、この方は?」

 王様は僕の方を向きアリスに尋ねた。

「はい。彼はシオンさんと同じく戦闘のプロフェッショナルです。必ずやお役にたてるかと思います」

「…彼が? いっ、いやいや、そうか…。君もわざわざ遠いところからありがとう」

 僕は軽くお辞儀をした。アリスと変わらないぐらいぎこちない動きだった気がする。

「いっ、いえ…。…では、早速本題に入りたいのですが、どういった状況なのでしょうか?」

「ああ、実は…」

 話を聞くと、見たこともない黒い一匹の魔物とキノコみたいなモンスター達がコビットの国に生えている魔法のキノコを食い尽くそうとしているらしい。しかも、回復薬等に使える輸出に大事なキノコばかりを狙っていて山は毒キノコばかりになっているそうだ。僕達は、一通り説明を受けた後にいくつか質問してみた。

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