第30話R
「急になにいいだすのよ!」
「肌も綺麗でスタイルもよくて可愛くてさ。一流モデルみたいだよ」
…おっ、更に赤くなってきたぞ。面白いな…。…ん?
突然、アリスはベットから立ち上がり僕の目の前に立った後、右手をあげて人差し指を立てた。
「…どうしたんだ? 私が一番可愛いってアピールか?」
そんな冗談をいうと、アリスの人差し指の上に小さな火の玉が浮かび上がった。嫌な予感しかしない。
「これ以上変なこといったらファイアーボールをあてるから!」
「まっ、まて! もういわないから! おみやげもあるから! なっ!?」
「…ならいいわ。早くおみやげだしてよ!」
アリスが手を降ろすと赤々と燃える火の玉は萎んでいった。とりあえず、一安心といったところだ。
「全く恐ろしいやつだな…。はい、おみやげ…」
ボトルが似ているからなんともいえないが、一応お詫びの印にバッグの中からバニラ味のコーラをイメージして取りだした後、アリスにポンッと優しく投げた。後でこっそり飲もうと思ってたのに…。
「変なこというからでしょ。でも…あ…。…ん? また、コーラ!?」
「いっ、いらないんならやっぱり返して…。そっ、それか半分…。あっ、あぁっ、あぁ~」
一口飲むとそのままボトルを傾けて、ゴクゴクと飲み始めた。ああ…せめて…ちゃんと味わってほしい…。おっ、俺のコーラが…。
「なっ、なにこれ! この変わった味のコーラ…。すっごい美味しい!」
…やっぱりイメージすれば取りだせるみたいだな。…どうでもいいか。
「…はぁー。…飲んだんだから許してくれよ」
「許すから教えてよ! これ、どこに売ってるの!?」
「…非売品だよ。報酬で少しだけもらってきたんだ」
「報酬?」
「ああ、クエストを受けてさ…」
続きを話そうとするとアリスはコーラをテーブルに荒っぽく置いた後、僕の襟を持って揺さぶり始めた。
「どういうことなのよ! 私に黙ってなんで勝手にそんな面白そうなことしてたの!?」
「くっ、苦しい。アッ、アリスは寝るっていってたから…」
「クエスト受けるなら起きてたわよ! 当然、明日も受けるんでしょ!?」
「うっ、受けないよ」
「信じらんない。私、クエスト受けてくれるまでここからでないから…」
襟から手を離すと不服そうにほっぺを風船のようにふくらませながらベッドに横になった。本当にワガママな子だ。
…まいったな。
「…っていうかアリスの護衛がクエスト受けてるようなもんだろ」
「……」
…無視かい!
「なぁ、明日はエルフの王都にいこうと思うんだけど…」
「……」
…ダメだ。…反応がない。くそぅ…。秘密兵器をだすしかないのかぁ…。
「…はぁ……。…実はさ…他にも変わった味のコーラがあるんだ」
「……」
僕の言葉にアリスはなにもいわなかったが、やたら耳がピクピクと動きだした。…もうひと押しだろう。
「アリスが黙ってついてきてくれたら、そのコーラ…半分あげるよ」
「…全部ならいいよ」
「全部だとっ!?」
「…うん」
…ここでモタモタしている場合でもないし諦めるしかないか。
「わっ、わかったよ」
「…ほんとに?」
「…でも、エルフの王都についてからな」
「やったぁー!」
振り向いたアリスはとってもにっこりと笑っていた。どうやら機嫌が治ったようだ。代償はかなり大きいが…。
「…ついてからだからな……」
「わかってるわよ。…まぁ、全部っていったけどアルが無事に王都まで護衛してくれたら、ちょっとだけわけてあげるからね。…感謝してよ?」
「…ああ……」
そもそも俺のコーラなんだが…。
「そういえば秘密の任務があるっていってたけど…。私を送り届けたら、さっきの人に手伝ってもらうの?」
「まぁ、一応…」
「…一応?」
「…うん。…本当にコーラをわけてあげるくらいで手伝ってくれるのか心配だよ」
「コッ、コーラって…。秘密の任務ってそんなに簡単なの!?」
「…いや、かなり難しいと思う」
「…なら、お金を普通に払えば?」
「うーん…。実はその人…お金で払うと本当は依頼料がかなり高くて…。すごい強そうなんだけど…」
不安そうに僕がいうと、アリスはベッドから飛び降り、バッグの中からお財布を取りだして話しかけてきた。
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