過去の代償 5


「…実は、このメールには続きがあります。


“2人を別れさせろ。もし出来なければ、世間に公表する。”


というような内容でした。」



ぇ…



「紫津木を同席させれば、『別れない』の一点張りで、話し合いにはならないでしょうからね。」



話し合い…?

 


「わかりました。…確認なんだが…2人は、恋人同士という事で、いいのかな?」



怖いけど、オレは、父さんの目を見て頷いた。



「そうか…。」長く息を吐いた父さん…。


明らかに困ってる。



「送り主は、わかっているのですか?」



考え込んでいる父さんに代わって、一条さんが質問してきた。



「それは、まだ…。私のPCのアドレスを知っている人間は、そう居ないはずですので、内部の人間か…。

送信元も、ネカフェのPCのようでしたし…」


「それで…愛が罪に問われるという事は?」


「いえ…同性の場合、18歳未満では無い限り、逮捕される事はありません。」



そうなんだ…そんな事、全然…



「ですが、イメージの問題があります。

マスコミの方は、こちらで抑えるつもりですが、今の時代、SNSというのがあるので、安心は出来ません。

毎晩のように、買春行為を行っていたとなると…、」


「藍は、そんな事してない!」


「それは、葵君の説明でわかっているよ。ただ、高校生の紫津木君の場合、イメージだけの問題だけでは、済まなくなる可能性がある。」


「それって…逮捕されちゃうって事?」


「任意同行を求められるかもしれないね。していない…という証拠も無いだろう?」


「そんな…酷いよ…オレ…納得いかない。 藍は、一度もオレを抱いたことがないんだよ?」



「「一度も?!」」



葵さんに、一条さん…シンクロしてますけど…そこ、気になるの?



「昨日も、何も無かったんですか?」



そこ突っ込むなんて、一条さんにしては、珍しい…。

  


「まあ…恋人同士だから…何も無かった訳じゃないよ…ただ…オレ…男に抱かれるの…トラウマになっちゃったみたいで…

抱いて欲しいと思っていても…身体が拒否っちゃって…ヘヘッ 藍のこと…大好きなのにね…」

   

「愛ちゃん…。」


「嫌われても当然なんだけど、少しずつ、前に進んでいこうって言ってくれて…

昨日も、寝室の明かりを消さなかったり…常に、怖くなったら止めてやるから言えよって…」


「なんだか…妊活中の夫婦みたいだな。」



ふ、夫婦?!


葵さんが何気に言った一言に、過剰に反応してしまう。

妊活中かは、別にして、夫婦みたいと言ってもらえた事に、嬉しい気持ちが湧き上がってきて、バレないように唇を噛んだ。



「優しくて、思いやりのある人なんですね。」



一条さんが、誉めてくれた…!



「うん!それに、年下なんだけど、

いっつも甘えさせてくれて、夜寝る時なんて、腕枕を強請ったら、してくれたよ。」


「修行僧のような生活ですね…。」


「地獄だな…。」

 

「え?なになに?オレ、藍に酷い事した?」

 

「そろそろ、話を元に戻していいかな?」



ひぇぇぇぇっ!

  

父さんの存在忘れてた!

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