男の子 8


公園の芝生の上に、足を投げだして座った。

目の前には、静まり返った池が広がり、空には雲が、のんびりと浮かんでいて…

そんな空間の中で、オレは、大きく深呼吸をした。


あの狭い空間の中で生きてきて、久しぶりに外の世界を見たような……

そんな感覚。

 

もちろん、今までだって外に出る事はあったけど、心の中には入ってこなかった。


こんな風に思えるのも、紫津木く_、紫津木の影響なのかな? 

と、隣の彼を見上げた。


うっ……


思わず息をのむ……とは、この事か。


澄んだ青い空やそよ風に揺れる緑を背景に、

紫津木の髪も揺れていて……


スタジオで見た彼も、色っぽくて良かったけど、自然の中にいる彼は、本当に天使のようで……

思わず見惚れてしまう。


でも……


紫津木は、自分の顔、好きじゃないんだよね……。


なんでだろ。


他人からみれば、ただもったいないと思うだけだけど‥…


この容姿のせいで、苦労した事があるのだろうか……?


いや……でも……自分自身が一番わかっていないなんて……


……それが、彼の良いところだったりするのかな。


オレを見つめてる、このブルーグレーの瞳も、吸い込まれそう……て……、


ん?


えぇぇぇっ?!


彼と目が合ってしまった……。



「い……いつから見てたの?」



自分でも顔が熱くなっていくのがわかる。



「慌てすぎ……。」と、彼は困ったように笑った。



「また、オレのこと綺麗だと思ってた?」



っ!!



「マジかよ……。」



えぇぇぇっ?! 何で?何でバレた? 

オレ、どんな顔してた?



「ごめ……」


「悪かったな……。」



えっ?



「……昨日、変な空気にした。」



あぁ……。



「今日は、その事を謝りに……。」


「いえ……こっちも、立ち入ったこと訊いちゃったかな?て、思ってたんで……全然…。」


「普段なら、笑顔でスルーできることなんだけど……昔からの、悪い癖がでた……。」


「悪い癖?」


「気になるコが相手だと、つい意地悪なこと言っちまう……。」



ん?……気になるコ?



「その事も謝らなきゃな……。」


「その事……て?」


「実はオレ、如月のこと……、」



彼は言いにくそうに視線を逸らして、目の前の池に顔を向けた。



「…女だと思ってた。」


「え……?」


「ホント、ごめん。」



まぁ…わかってたけどね。



「いいよ。そんなの言わなきゃわかんないのに、紫津木は正直だね。」


「正直つーか……自分の気持ちにケリつけたくて……。」



……?



オレが、あまりにも不思議そうな顔をしていたのか、

彼は、ひとつ大きな溜め息をついて髪をかきあげた。



「……お前に惚れた。」



へぇ……



ん?



ぇ……


えぇぇぇぇっっっ?!!!




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